特集「60回までの読者お気に入り投票」

 皆さんにご参加をお願いしていた、連載60回でのお気に入り投票の結果を集計しました。ベスト10は次のようになりました。

   《60回までの読者投票によるベスト10》
  第59回 未来エネルギー核融合の挫折
  第60回 リテラシー教育の発見と行方
  第58回 超長寿時代に介護保険は効くか
  第53回 明治維新(上)志士達の夢と官僚国家
  第54回 明治維新(下)循環社会から膨張社会へ
  第35回 年金制度の疲労に見る社会の衰え
  第55回 ダイオキシンの人体汚染を考える
  第25回 インターネット検索とこのコラム
  第21回 コメ作りの破局を見ないために
  第 6回 文書の電子化から電子図書館へ


 「59核融合 とても分かり易かったです」(Shirotaさん)、「59核融合 41英語力 その他,いずれも時宜に叶ったテーマです」(Miyazakiさん)といった意見が、トップになった「未来エネルギー核融合の挫折」を端的に表現しています。ほとんどの種類の核融合実験装置を取材した経験があるので、自分で文献を集めて解説を書く自信はありますが、ネット上でこんなにも豊富に資料が見つかるとは当初は思っていませんでした。その意味では、私の取材システム自体がインターネット上でタイムリーなものになってきているのでしょう。

 「『1生涯独身時代』を読み愕然、以来全てが血となり肉となっております。EpsonPM2000Cにて毎回裏表印刷、10回分毎にまとめ、A4ファイルも早や6冊が出来上がりました」とメールを寄せていただいた畑さんをはじめ、すべての回を読まれていらっしゃる方が相当ありそうです。その一方で最近、読者になられた方は、当然ながら読まれている回への投票されていると思います。それを勘案しても、このリストは書き手として、いろいろ考えることが出来て、とてもありがたいものです。一口で言えば、時代への懸念が色濃く現れていると思います。

 「実は小生はVoyager Japan Inc.のT-Timeというアプリを通して読んでおります。こうすると縦書きでも良いし、文字の大きさも任意に変えられるのでとても便利です。また毎回ファイルしておけば簡単に検索が可能です。『第6回 文書の電子化から電子図書館へ』と『第25回 インターネット検索とこのコラム』を自分なりに応用しています」と書かれた金子さんのように、ネット上の情報の問題について、関心が高い方が多数であることがよく分かりました。金子さんのように縦書きで読まれるのもいいと思います。少なくとも、フォントは明朝体にしていただいたらと、かねがね思っていました。ゴシック体に比べて、読む印象がしっとりしてきます。ブラウザ等のオプション設定を変えるだけで可能です。

 「1位 空前の生涯独身時代、2位 明治維新(上)志士達の夢と官僚国家、3位 明治維新(下)循環社会から膨張社会へ・・・」と、ご自分での順位付けをお送りいただいた辻さん。明治維新の上・下回に支持が多かったことも嬉しい点でした。独立した機会に新しいことを試みたかったと裏腹に、当時は新たな読者の獲得が思い通りにいかなくて、評判が良くないのかとも考えたものです。「生涯独身時代は年金・介護保険・医療費あるいは官僚国家とも絡んで深く考えさせられました。あと、メディア・核融合、動燃事故や官官接待は現在の体制の古い面が如実に表れ、自分なりにいろいろ思うところがあります」と、書かれているyamazakiさん指摘のとおり、各回ごとに読み切りでもかまいませんが、それぞれの内的な関連は書き手として、いつも意識していますし、ニュアンスを盛っています。

 第39回「ロボットが人と持ちつつある関係」について浜田さんからこんなコメントをいただきました。「読み終えてしばらくしてから、記憶に残っていた最後の文章の重みと怖さを感じるようになりました。その点で、最も印象に残る回のひとつといえます」
「不気味なことに、特段の理由もなく中学生が女性教師をナイフでめった刺しにするなど、人間側がロボットに対して優越を誇っていた境界線を引き下げつつある。ロボットがしたのなら、原因をプログラミングのミスと呼ぶが。」
 書き手として、これも励みになるエールでした。

 60回目からの読者、日沖さんからは「読ませていただいて、改めてリテラシーについて考えました。実社会ではPCを使える人と使えない人がそれほど差を感じることなく共存していますが、今後急速にネットワーク社会が進むとその差は広がるばかりだと思います。やはり、教育という形で何とかしないと手遅れになるんだと痛感しました」という声。Beautiful Dreamerさんからは「もっと現在の腐った日本の政治体制、社会体制を暴くような記事を。世界でもっとも遅れている最後進国、経済という見せかけの金だけ膨れ上がり、もっとも大切な物を忘れてきたこの国に対する批判を」という、ご注文でした。

 「インターネットは情報の宝庫ですが、その反面、価値のある情報もそうでない情報も同じ土俵に載ってしまっている、という側面があるとおもいます。その点、団藤さんのこのマガジンは、基本的なトピックの説明に加え、有益なネット上の情報を体系立てて紹介してくださり、みごとだと感じています。情報の扱い方をこれからも参考にさせていただきたいと思います」(野崎さん)。あるいは「他のメルマガでも、『作者の考えをまとめて提示されるタイプ』のものは読みやすいのですが、自分(読み手)に知識の無いうちに目の前にかざされると深く考えずに同調してしまいそうで怖い気もします。その点『インターネットで読み解く!』は本文内で資料の出典に対してリンクが張られていて、参照しながら読み進められます。ただ、リンク先を辿ってあちこち飛んでるうちに糸の切れたタコになってしまうこともありますが...」(yamazakiさん)のコメントを、このコラム利用の代表的な意見として紹介させていただきます。

 昨年暮れ、Yahoo! Japanの「今日のオススメ」で「コラムを書きたい」と題して、この連載が紹介されました。コメントを引用させていただくと、「インターネット上の知的資源をうまく収集すれば、データに裏打ちされたコラムや報告書を書くことができるという見本がここにある。作者は新聞記者なのだが、ネット上に与えられた情報は皆に平等だ。あとはあなたの情報収集手腕と、ものの見方次第」。私が目指していることは、インターネットが何に、どう使えるのかとのイメージを豊かにすることです。一昨年、週刊ASCIIの取材を受けた際には、「インターネットで読み解く!」の手法を真似する書き手が次々に現れるのでないかと言われました。本当にそうなって欲しいものです。

 投票の集計結果詳細は以下の通りです。