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団藤保晴の |
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第79回「脳のドックから痴呆症の現在まで」
(99/12/16)
国内では初めて、アルツハイマー型痴呆治療剤「アリセプト」が、11月末に発売になった。欧米でも何種類かの薬があり、実はいずれも痴呆症の病気そのものを治すというよりも、脳内の病的変化が進行するのを遅らせる役割しかしない。しかし、国内でも薬が使えるようになった意味は決して小さなものではない。7、8年前、「脳のドック」草創期に関心を持っていたころ、新しい画像診断技術が痴呆症をどう解明できるのかに興味があった。問題は為す術(すべ)がない病気の診断ができても、どうなるのかだった。色覚異常の検査は可能でも、治療は不可能というのと似ている。今回、思い立って調べてみると、痴呆症、特に老人性痴呆の周辺はかなり探究が進んでいた。 ◆診断技術の進歩で脳内を見ることは簡単に
脳のドックは数年前の情報で4百施設余り、現在では千に迫る医療機関で開設されていると思われる。当面、一番の売り物は痴呆症ではなく、働き盛りを襲う突然死に多い「くも膜下出血」の予防にある。脳内で大出血を招き、初回の出血で半数は亡くなる病気だ。原因は脳の動脈に出来る「こぶ」の破裂で、脳動脈瘤(りゅう)と呼ぶ。血管壁が弱くなって変質し、風船のように膨れ上がった状態である。例えば「放置したら1年間に破裂する危険率は1%くらい」とかの評価をしてくれる。このケースなら10年間経てば1割にもなる。
◆痴呆性老人は来世紀に急増する
お年寄りの「ぼけ」問題は有吉佐和子のベストセラー『恍惚の人』以来、一般の関心が高くなっている。身近に痴呆症の人をもつ方もいらっしゃるだろう。この先の高齢化社会の到来で、さらにどれくらい増えるのか、以下に厚生省の推計を掲げる。
最近の研究で注目されるのは、国内の患者に予想以上にアルツハイマー型痴呆が多いとみられることだ。従来は欧米と違って、脳血管性の痴呆の方が何倍も多いと思われてきた。痴呆の問題は地方の研究機関に先進的に取り組むところが出ている。その筆頭、兵庫県立高齢者脳機能研究センターの「兵庫脳研ニュースレター第3号」は、「アルツハイマー型痴呆の比率について」で、付属病院に入院し最終診断が痴呆性疾患とされた「非専門医からの二次紹介までの患者さんで姫路市内在住」との条件をしぼって検討している。 結果は患者全体の66%がアルツハイマー型で、特に女性では78%にも達した。男性は47%だった。脳血管性が7.8%しかないのは驚きであり、前頭側頭痴呆(ピック病)が次いで5.6%だった。 兵庫脳研は「痴呆に限らず認知機能障害一般が疑われる患者さんすべて」を守備範囲にしている。身体症状よりも認知機能にポイントがあるから、痴呆患者の全体像をつかんでいるのか、多少の疑義があるものの「少なくとも『痴呆で困っている』患者さんの過半数がアルツハイマー型痴呆であること は確かなのではないか。私たちは現在こう考えています」と述べる。 大阪市立大医学部の「老年痴呆の臨床」で脳血管性痴呆は「知能や記憶などが部分的に障害されており、いわゆるまだら痴呆(ある部分ははっきりしているがある部分はかなり落ちている)を呈することがあり」「アルツハイマー型痴呆と比べ人格や病識は比較的末期まで保たれていて、初期の段階では周囲の人には気づかれないことが多い」とされている。 「痴呆で困っている」人にアルツハイマー型が多いという意味は、この差と理解したらよいだろう。 では脳の状態は痴呆の型によってどう違うのか、「兵庫脳研ニュースレター第11号」は「痴呆疾患脳の三次元表示 」を見せてくれる。磁気共鳴の断層像から全体を眺める三次元像を、全自動5分間で合成できるようになっているそうだ。「前頭側頭葉型痴呆という疾患の脳で」「ほぼ前半分の前頭葉が極めて強い萎縮を示し」これに対して「アルツハイマー型痴呆では後側の頭頂葉に萎縮が見られ」る。 ◆痴呆の危険因子と予防策
アルツハイマー型が多いとの観察に異議を唱える研究者も、もちろんいる。例えば、秋田大では磁気共鳴断層像と痴呆患者の関係を調べ、大規模なデータベースづくりが試みられている。「MRIデータベースに基づく痴呆予測システム」との論文が読めるし、「痴呆脳の画像疫学」は「痴呆患者の脳障害発生の基礎疾患としては高血圧・高脂血症・アルコール過飲が際だって重要な役割を果たしていることを指摘した。さらに146名の痴呆脳のMRIの特徴を解析し、我々が以前から主張している基礎疾患とMRI所見の画像学的対応がこれらの患者においても見られる」と主張している。
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