団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

第84回「自然エネルギーへ踏み出すとき」 (2000/05/11)

 日本の太陽電池生産は、1999年に米国を抜いて世界一になった。米国が前年比20%増の6万5千キロワット(kW)だったのに対して、日本は62%と急増して8万kWにもなっている。この勢いはさらに続くとみられている。折しも、国会では相反する二つのエネルギー法案が準備されつつある。東海村臨界事故で逆風が強まっている原発の立地を、一般財源を使ってまで促進しようとする自民党の特別措置法案と、原発立地に使われる電源開発促進税(電力料金に上乗せ)を太陽光発電や風力発電にも回そうとする、超党派の自然エネルギー促進法案だ。政府レベルでも政策見直しの風は吹いている。通産省が、総合エネルギー調査会で最高機関といえる総合部会を10年ぶりに4月末に開き、1年かけて議論を進める。また昨年末には新エネルギー部会の第1回会合を開いている。

◆損得計算に乗り始めた太陽光発電

 環境問題への市民意識の高まりが背景にあるが、それだけではない。太陽電池パネルは従来は出来上がった屋根の上に載せなければならなかったが、昨年、建築基準法で屋根材そのものとしても認められたため、コスト計算が一変した。これまでは政府補助を受けても、設置者は持ち出しを覚悟しなければならなかった。「雨漏り実験室からの戯言」にある「住宅用太陽光発電の普及が加速!!」が、その計算を見せてくれる。

 「日本の新築住宅の屋根の広さの平均は約100平方m」「薄膜(アモルファス)太陽電池(効率8%)を」「6kW以上設置できる。6kWで90万円/kWなら、540万円。99年度の政府補助なら約200万円なので、導入者の負担は340万円」

 「メーカーによると太陽電池は20年経過しても定格の9割以上の性能ということなので、耐久性という点では普通の(10年ぐらいで塗りなおしをしなければならい)屋根材よりは優れ」「高級な屋根材の工事費を加えた価格は200万円程度」「仮にこの分を190万円として340万円からこの額を引くと実質的負担増は150万円」

 「6kWの太陽光発電システムは年約6千kWh発電する。一般家庭の時間帯別の昼の電力料金は25円/kWh程度であり、6千kWhは15万円に相当する。家庭内で使わない場合は電力会社に売電して現金が得られるので、導入者はほぼ確実に年間約15万円の利益がある」「10年では約150万円の利益となり、導入時の負担分の利益が出る」

 ふつうの家庭の電力消費では6kWも必要なく、その半分あれば足りる。余った分を電力会社に売れる。自宅で使っても電力料金が節約できるので、同じことになる。例えば屋根材一体型には、こんなのシステム例がある。

 また、市民運動として共同出資し太陽光発電所をつくる動きが各地にある。「太陽光・風力発電トラスト」が草分け的な存在である。工場の屋根に発電所を、というプロジェクトもある。

◆昼間の電力ピーク時に威力を発揮

 多数の太陽光発電を電力会社に接続することに、電力系統の安定運転に支障があると主張する人が今もいる。3年前に書いた連載第22回「太陽を友に暮らそう」で、電力業界そのものがピークカット電力として大きな存在たりうると認めていることを、電中研の資料で明確にした。

 現在の電力供給は、安全運転のために一定の出力を維持しなければならない原子力をベースに、昼間のピーク時には火力発電を臨時に運転したり、夜間余った原子力発電分を水としてダム上に汲み上げおく揚水発電などで対応している。原子力の発電コストは廃棄物などを含めると安いと言えない問題がある。それを置くとしても、揚水発電の高コストや夜間電力の大安売り制度などと、昼間のピーク時に電力消費地の真ん中で働いてくれる太陽光発電を比べれば、どちらにお金をかけるべきか、歴然としている。

 国による2010年の太陽光発電導入目標は500万kW。しかし、実際の発電設備は98年までで2万kW程度、99年に5万kWが導入されていたとしても、まだトータルで10万kWに足りない水準である。2005年には年間の新築住宅着工数50万戸の2割、つまり10万戸程度に太陽光発電システムが入ると、メーカー大手のシャープなどは予測しているが、本格的な普及を前に足りないものがある。

 欧米諸国では、自然エネルギーでの発電分を電力会社に買い取らせるよう義務づけている。この国では、電力会社が好意で買ってあげるような形をとる。買い取り価格も恣意的なものだ。第22回「太陽を友に暮らそう」で書いた通りである。伝えられる超党派の自然エネルギー促進法案は、買い取りの「努力義務」を課したり、買い取り価格も一応は監視できるようにするという。

 自然エネルギー促進法案は、衆参250人以上の議員か参加した議員連盟が推進している。会長は、元環境庁長官の愛知和男代議士。参加の役員・会員名簿を見ていただくと、いかに広い範囲の政治家が参加しているか分かる。

 橋本龍太郎から横路孝弘に土井たか子、近江巳記夫と広範囲である。こうなると、すっきりした法案になりにくいのも事実だ。本来は買い取りを完全な義務にしたり、価格もきちんと決めるべきだが、これだけの政治家が集まったことに、高速増殖炉開発路線が破綻してもまだ原発だけしか念頭にない、この国のエネルギー政策への危機意識が表されていると思う。

 議員たちが参加した「第一回自然エネルギー円卓会議」から拾ってみよう。

 愛知氏は「(政府の)『エネルギー需給見通し』は、通産省の審議会によって作られているもので、政治の判断と言うのは一切入っておりません。はたしてこのような状況でよいのでしょうか」と述べ、自民の河野太郎氏は「日本は自然エネルギー分野に関して、世界のトップクラスを走っていくのだという政治的な意志を明確にし、そのためにどうしていったらいいのかという議論から始めていかなければならないと思います」と言う。民主の佐藤謙一郎氏は「自エネルギーというテーマをこんなに多くの方面から、皆様が集まって、新しい法律が作られていく中で、その仲間の一人に立ち会わせていただいていることに震えるような喜びを感じております」と率直である。

 国のありように根本から関わるエネルギー政策が国会と関係ない場所で決められてきた不自然さが、ようやく認識された訳だ。

 昼間しか発電できない太陽光発電は、100万kW分集まったとしても年間通せば同規模原発の7分の1くらいしか発電しない。しかし、供給の厳しい昼間では対等であり、100万kW分が現実になる日は遠くないし、それが数個分になる日も見えてきた。

◆風力発電も洋上に大きな可能性

 太陽光発電では世界の先頭を走っているのに、風力発電では大きく遅れている。欧米では商業発電に入り、世界では設備が300万kWを超えるドイツや200万kWを超す米国などに比べると、5万kWの日本は見劣りする。2010年の目標は30万kWだ。

 風があれば回り続ける風力発電が担う役割は、原子力のようにベースになる。「太陽光・風力発電トラスト」の「新たなエネルギー供給の未来」に分かりやすい説明図がある。将来、自然エネルギーに転換したとしたらどうなるのか。現在の原子力の部分に、水力や風力・波力発電が座り、その上に廃棄物発電や燃料電池など、さらに昼間のピーク時間帯には太陽光発電が働く図式である。

 では、そんな大規模な風力発電が可能か。長期計画策定会議に資料として出された、関和市・東海大学教授作成の「風力発電の現状と将来展望」は、風速5.0m/s以上、標高200メートル以下、傾斜3度以下の陸上に設置場所を想定すると、500kW風車の設置可能台数は13,473台、設備容量687万kW、年間発電量65億kWhなのに対して、海岸から1キロまでの洋上発電を考えると、136,500台で6825万kWと10倍に増え、その発電量は932億kWhと電力各社の総販売量に対して10%を超える。海岸から3キロまで広げると、ここの数字はさらに3倍以上に膨らむのだ。

 世界には電力の数%から数十%を、将来は風力に依存しようとしている国があるという。この国も可能性は持っている。

 3月末に東京電力が八丈島で、電力会社としては初の事業用風力発電所の営業運転を始めた。羽の長さ19.2メートル、出力500kW。八丈島では主力のディーゼル発電所よりも発電コストが安い。

 4月下旬には、ソニーが東電と提携して秋にも、自然エネルギー事業の新会社をつくることが明らかになった。促進法による補助などを念頭に置いているのは間違いあるまい。2000年は自然エネルギーに踏み出した転換点の年として、記憶に残るのではあるまいか。



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