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第146回「メールマガジン全盛期は終わった」
(2004/06/10)
日本独特のインターネット文化として、海外に例を見ない発達ぶりだったメールマガジンに深い陰(かげ)りが差している。「その時代は終わった」とまでは言わないが、全盛期から転げ落ちていることは、次節の集計表を見ていただけば一目瞭然である。メルマガを創始し、今も月間2億部を配る代表的なメルマガ発行スタンド「まぐまぐ」の5月第1週上位20誌の発行部数を、2ヶ月前と比べてみた。
◆新規参入読者の枯渇が原因
この集計には「メールマガジン発行部数ランキング」が各誌別に保存しているデータを使わせていただいた。
【主要メールマガジンの発行部数推移】
順位 ジャンル 5月初 3月初 前後比
1 お得情報 192,232 201,419 95.4%
2 アダルト 113,814 122,174 93.2%
3 ダイエット 104,006 111,919 92.9%
4 心理学 99,316 94,336 105.3%
5 株情報 76,669 74,780 102.5%
6 ウェブ情報 74,791 74,510 100.4%
7 英字新聞 72,077 71,089 101.4%
8 英字新聞 62,618 64,160 97.6%
9 ウェブ情報 56,887 58,730 96.9%
10 芸能界 53,650 55,990 95.8%
11 懸賞情報 51,720 53,117 97.4%
12 転職情報 50,802 45,657 111.3%
13 メル友 50,456 52,729 95.7%
14 車情報 49,868 55,045 90.6%
15 パソコン 46,987 50,109 93.8%
16 英会話 45,357 45,744 99.2%
17 アダルト 41,859 44,634 93.8%
18 経営戦略 40,375 40,784 99.0%
19 競馬情報 39,837 41,400 96.2%
20 プレゼント 38,427 32,749 117.3%
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少し前までは軒並み増加が当たり前だった。今では増えている雑誌は例外的で、2ヶ月間で発行部数は平均2%落ちている。これが春先の異変ではなく、雑誌によって減り始め時期はばらつくものの、もう1年ないし1年半も前から続いている現象なのだ。
しかし、大部数のメルマガに限った現象ではないのか。部数や創刊時期による差はないのか。そこで最も古い97、98年ごろ創刊のグループと2年前の2002年創刊で元気がいいはずのグループで、上位から10誌とばしで同じ集計をした。
【最も古いメルマガ群の発行部数推移】
順位 ジャンル 5月初 3月初 前後比
1 ダイエット 104,006 111,919 92.9%
11 情報処理 25,507 26,426 96.5%
21 アダルト 17,489 17,641 99.1%
31 英語 13,590 14,351 94.7%
41 異業種 10,610 10,816 98.1%
51 Excel 8,524 9,199 92.7%
61 性生活 7,128 7,310 97.5%
71 国連情報 5,794 5,986 96.8%
81 日刊関西 4,412 4,563 96.7%
91 環境情報 3,259 3,593 90.7%
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【2002年半ば創刊群の発行部数推移】
順位 ジャンル 5月初 3月初 前後比
1 激安家電 37,770 43,289 87.3%
11 ビジネス 11,772 12,372 95.2%
21 東洋経済 7,687 7,751 99.2%
31 エクセル 5,935 6,195 95.8%
41 スケボー 4,958 4,752 104.3%
51 PM養成 4,494 4,415 101.8%
60 日記 3,835 3,838 99.9%
71 レシピ 3,121 2,741 113.9%
80 フランス語 2,865 2,438 117.5%
91 株式 2,630 2,569 102.4%
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ご覧の通り、古いメルマガや比較的新しくても大きな部数を獲得したものは明らかに衰退過程に入っている。これは硬派ものも軟派ものも同じだ。いや、実用情報や軟派ものの方が減少傾向は強く、中身のある硬派ものマガジンは、むしろゆっくりと落ちている。
減少原因ははっきりしていて、メルマガ購読に新規に参入する読者がほぼ枯渇したことにある。「まぐまぐデータ・ウィークリーまぐまぐ(その2)」に、「まぐまぐ」が読者向けに発行しているウィークリー誌の発行部数の推移が表示されている。新規にまぐまぐスタンドを利用してもウィークリー誌を取らない人もいるものの、「総合版」の部数が読者数の動きをほぼ反映している。順調に伸びていたのに、2003年初めで頭打ちになり、以後440万部前後でほと
んど変わらぬ状態が続いている。
メルマガの読者は、気に入ってずっと固定読者になる層と、一定期間読んで止めていく層に分かれる。連載第100回「ネット・ジャーナリズム確立の時」で2001年に「私のマガジンを例に取ると、年間で1万数千人が新しく購読を始め、数千人がやめていく。読者2万人前後のマガジンでは、似たような状態らしい」と書いた。やめていく数に見合った新規読者が生まれて、そのメルマガの部数は横這いになる。現状はやめていく数に新規が全く追いついていない。
新規読者はどうして枯渇しまったのか。平成15年「通信利用動向調査」にある「世代別のインターネット利用率の推移」を見れば事態が理解しやすい。世代別利用率は10、20、30代でもう90%に達し、40代も84%である。ここからは新たな利用者は出なくなっている。残る未開拓層はデジタル・ディバイド傾向が強い50代以上でしかない。
◆電子メールを取りまく逆風と……
原因ではないが、追い打ちを掛けたのがスパムメールの大氾濫だろう。
「MessageLabs 社の統計でイギリスでのウイルス、スパムの発生件数が増加」
に「特にスパムメールの増加が著しく、2002年には1/11 通であったのが、2003年には1/6 通に急増した」とある。この状況が2004年に入ると、5月26日の「Internet Journey」では「スパムメールが世界の電子メール数に占める割合は減るどころか、全体の70%近くにものぼり」となった。
メールボックスに入って来るスパムメールの多さにほとほと参って、私の場合は昨年夏からフリーソフトの「POPFile」を利用して自動選別してもらっている。しかし、英文の私信などスパムと誤って分類してしまう危険性もあって、時々はスパムと分類されたフォルダにも確認に行かねばならない。ソフトが順次学習していくのだが、完全ではない。
メール無しでは困る私が困っている状態だから、電子メールを使うのが嫌になった人が相当たくさん出ても不思議ではない。届いたとしても捨てられてしまい、以前ほどきちんと読んで貰えなくなっているのではないか。昨年、ホームページ紹介のメルマガにほとんど効果が見られなくなっている事実に気付いてから、その思いを強くしている。営業妨害になるので名称は控えるが、以前なら一度の掲載で最低数百件のアクセスを生んだ老舗マガジンでも、目に見える効果が出なくなっている。
メールマガジンは、インターネット上でプッシュ型最有力メディアである。待ち受け型のホームページには無い力があった。しかし、その力さえも第128回「ニュースサイトが生む津波アクセス」で取り上げた、連日数百、数千、大きくなると十数万のアクセス数を持つニュースサイト群の連携が凌駕するようになった。関心を持ったニュースのリンク先と簡単なコメントを並べて構成される単純さ、誰でもが手を出して長期に続けられる手軽さが受けて、どんどん増殖している。何十、何百ものニュースサイトが特定のニュースを順次取り上げれば、最大で数十万の津波のようなアクセスが発信源のサーバーを襲うことになった。
いま、ニュースサイトを眺めると、かっての超有力サイト「バーチャルネットアイドル・ちゆ12歳」や「俺ニュース」などが休止してしまい、その穴が埋まっていない印象がある。テキストサイト・ランキング「ReadMe!JAPAN」をWaybackMachineで呼び戻して日刊ランキングの推移を見ると、残っているサイトはアクセス数を伸ばしているものの、かつて見た活気に乏しい。燃え尽き現象だろうか。ここにも陰りがある。
代わって昨年末頃からブログが台頭してきたと見る人がいるかも知れない。しかし、影響力や動員力はメルマガやニュースサイトには、まだ比べるべくもないと思っている。本場の米国でも広く読まれているブログは極めて少数で、大部分は自己満足の世界と言われている。それに比べて、巨大で確かな存在だった日本独特のインターネットパワーはどうなって行くのか。ここしばらく、注視していきたい。
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