アップル配信で音楽業界の目は醒めるか [ブログ時評31]
既に欧米で人気があるアップル社のネット上音楽配信サービス「iチューンズ・ミュージック・ストア」(iTMS)が8月4日、日本にも上陸し、マスメディアやネットユーザーの多くから好評を得ている。1曲150円が中心価格であるため、高止まりしていた国内の既存音楽配信サービスも一斉に価格引き下げに出た。
使ってみた印象は聞きしに優るものだった。こなれた使い勝手、ジャンル多様、100万曲からのワイドセレクション、曲名をクリックするだけで30秒は聞けてしまう。評判しか知らない新しい曲、懐かしい曲、名指揮者の聞いていない盤など、とりあえず楽しんでいると際限が無い。既に2年以上も海外でサービスをしており、日本は20カ国目。Jポップはもちろん歌謡曲や演歌まで含めたローカライズにも抜け目は無い。
AV-watchインタビュー「iTunes Music Store、日本での準備は100点満点」を引用しながら語っている「情熱」(la vie)の通りになって欲しいものだ。「音楽を愛している専任チームってところがAppleらしい」「このビジネスモデルが音楽業界に一石を投じて、業界、消費者、作詞・作曲者などなど、みんながWin-Winな関係になれるように良い方向に改善されていくといい」。しかし、ソニーやビクターなどの大手レーベルが楽曲を提供するのを拒んでいるのも事実だ。ちょっと聞いてみたいと探して見つからない歌謡曲ならいくつでも指摘できる。
実は日本の音楽産業は危機的な状況にある。日本レコード協会のデータから作成した次のグラフを見て欲しい。コンパクトディスクが登場した1984年から2004年までのディスク・テープ生産金額、つまり音楽ソフト生産額と歌手デビュー数との推移をいっしょに見てもらえるようにした。 音楽ソフト生産額は1998年の6074億円をピークに、際限が無い落ち込みに突入した。2004年の3774億円はピーク時の62%にすぎない。業界は不正なコピーやファイル交換の蔓延などを理由に挙げがちだが、実態は違うと考えている。ひとつの傍証に歌手デビュー数の流れを見て欲しい。生産がピークだった1998年には202人と最盛時の4割にも落ち込んでいる。この業界は全盛のピークにさしかかるころから地道な努力を厭いだした。
2002年に書いた連載第127回「音楽産業は自滅の道を転がる」と海外からも随分読まれた英訳版の指摘「マーケティング技術でつくられた特殊な好況構造への過度依存」が何十年もかけて蓄積した音源をこつこつと売る商売の仕方を吹き飛ばした。メガヒットでなければ無意味と、一攫千金の仕事にしか興味を無くし、次世代の才能を育てる努力を怠っているうちに、定番のように考えていたメガヒット・シングルが出なくなった。
「音楽産業は自滅の道を転がる」で、これまで無視していた50代から上の世代にも目を向ければ、ネットでの音楽配信にも活路があると指摘した。しかし、実現した配信システムは曲の値段は法外だし、CD−Rへの焼き付けも出来ないなど問題点は放置されてきた。iTMSのシステムは当時からの私の問題意識にかなりの面で応えている。ここでレーベルの壁を持ち出して冷や水を掛けるのではなく、少しでも多くの音楽ファンに戻ってきてもらうことを最優先にして欲しい。そうでなければ、生産額グラフの一本調子の落ち込みにブレーキを掛けることは覚束ない。
使ってみた印象は聞きしに優るものだった。こなれた使い勝手、ジャンル多様、100万曲からのワイドセレクション、曲名をクリックするだけで30秒は聞けてしまう。評判しか知らない新しい曲、懐かしい曲、名指揮者の聞いていない盤など、とりあえず楽しんでいると際限が無い。既に2年以上も海外でサービスをしており、日本は20カ国目。Jポップはもちろん歌謡曲や演歌まで含めたローカライズにも抜け目は無い。
AV-watchインタビュー「iTunes Music Store、日本での準備は100点満点」を引用しながら語っている「情熱」(la vie)の通りになって欲しいものだ。「音楽を愛している専任チームってところがAppleらしい」「このビジネスモデルが音楽業界に一石を投じて、業界、消費者、作詞・作曲者などなど、みんながWin-Winな関係になれるように良い方向に改善されていくといい」。しかし、ソニーやビクターなどの大手レーベルが楽曲を提供するのを拒んでいるのも事実だ。ちょっと聞いてみたいと探して見つからない歌謡曲ならいくつでも指摘できる。
実は日本の音楽産業は危機的な状況にある。日本レコード協会のデータから作成した次のグラフを見て欲しい。コンパクトディスクが登場した1984年から2004年までのディスク・テープ生産金額、つまり音楽ソフト生産額と歌手デビュー数との推移をいっしょに見てもらえるようにした。 音楽ソフト生産額は1998年の6074億円をピークに、際限が無い落ち込みに突入した。2004年の3774億円はピーク時の62%にすぎない。業界は不正なコピーやファイル交換の蔓延などを理由に挙げがちだが、実態は違うと考えている。ひとつの傍証に歌手デビュー数の流れを見て欲しい。生産がピークだった1998年には202人と最盛時の4割にも落ち込んでいる。この業界は全盛のピークにさしかかるころから地道な努力を厭いだした。
2002年に書いた連載第127回「音楽産業は自滅の道を転がる」と海外からも随分読まれた英訳版の指摘「マーケティング技術でつくられた特殊な好況構造への過度依存」が何十年もかけて蓄積した音源をこつこつと売る商売の仕方を吹き飛ばした。メガヒットでなければ無意味と、一攫千金の仕事にしか興味を無くし、次世代の才能を育てる努力を怠っているうちに、定番のように考えていたメガヒット・シングルが出なくなった。
「音楽産業は自滅の道を転がる」で、これまで無視していた50代から上の世代にも目を向ければ、ネットでの音楽配信にも活路があると指摘した。しかし、実現した配信システムは曲の値段は法外だし、CD−Rへの焼き付けも出来ないなど問題点は放置されてきた。iTMSのシステムは当時からの私の問題意識にかなりの面で応えている。ここでレーベルの壁を持ち出して冷や水を掛けるのではなく、少しでも多くの音楽ファンに戻ってきてもらうことを最優先にして欲しい。そうでなければ、生産額グラフの一本調子の落ち込みにブレーキを掛けることは覚束ない。