学校給食事情〜飽食国の貧困から始めて [ブログ時評36]

 岩波書店『世界』11月号への連載は「ドイツ総選挙と比べながら考えた [ブログ時評34] 」にした。その11月号が手元に届いて気になる記事を見つけた。「イギリスで巻き起こる『給食革命』〜はたして『民営化の失敗』から立ち直ることは出来るのか?」である。「一九八〇年代の民営化をきっかけに急坂を転がるように質が落ち、伝統的な料理が姿を消してファストフード型のメニューが主流」になった。この春、それを見て子を持つ若手人気シェフ、ジェイミー・オリバーが学校の調理場に入り込んで変革させる運動を起こし、全国的な大反響を呼んだ。フライド・ポテトにチキン・ナゲット、あるいはピザかハンバーガー、さらに冷凍か缶詰の添え菜。小学生平均で1食わずか74円と、刑務所受刑者昼食の半分で賄われていた衝撃の実態がテレビで放映された。

 『世界』がすぐ手に入らない方もいらっしゃるので、文章量は『世界』の何分の1かしかないが、英国大使館ウェブの「イギリス給食界の革命」も添えておく。また「政府による食コントロール」(アンモナイト)が英国発の今の情報を流している。「セカンダリー・スクール(11歳から)にずらずらずら〜っと並ぶポテチとチョコとコーラ類の自販機を見て、しかもそれでお昼を済ませることも可能だと知って、最初は眩暈がした」「ジェイミー・オリヴァーのやっているスクールディナー(学校給食)革命だって、それが浸透していくまでにはものすごい時間がかかりそうだし、実際、うちの子の学校は何の変化もない…」。これまで温めれば出せるものばかりだったのだから、調理するスタッフを再教育するだけでも大変だろう。

 学校給食には以前から関心がある。日本でも各校ごとの調理から、数校を束ねた給食センターへの集中、あるいはその民間委託が各地で進むと聞く。しかし、地元で採れた食材を積極的に使う運動などがあり、全国一様ではない。米飯給食も良い結果を生んでいる。今どんな給食を食べているのか探して、ある給食センターに勤務している方の「給食献立」(給食万歳)を見つけた。ずーと見ていくと、色々なご飯に汁物、一品と手間を掛けてある感じがする。ファストフードとはもちろん違う。英国に比べたら合格ではないだろうか。

 再び欧州でもフランスは英国とまるで違うらしい。「フランスの給食」(フランス在住kermesseの日記)は言う。「原則としては、子供達は2時間ほどの昼休憩を家で過ごす」「共働きの家庭や特別な理由がある子は学校の食堂(cantine)で毎日食べる」「食堂では前菜・メイン・チーズ・デザートがきちんと出てくる」。さすがに食の国である。

 米国についても適当な報告があった。「アメリカ学校見学?自動販売機&給食? 」(The New York Walker)はカロリーが高い食品を自販機から閉め出し、子どもの健康に注意している学校に調査に行った。ニューヨークから電車で1時間ほど。しかし、写真に出ているのメニューは脂っこい感じで、英国の給食とあまり変わらない感じがする。毎日「ジャンクフードの代表格ピザ」が付くそうで、さらに欲しければ自販機でデザートなどを買って食べる。これで子どもの健康に注意しているのなら、普通の学校では太って当然だろう。

 先進国から一転して、途上国の状況を国連世界食糧計画(WFP)で見よう。「WFP世界の学校給食キャンペーン『学校へ、そして飢えから抜け出す』」にある「世界の学校給食報告書2003」である。「食糧にできること」の節を開いてもらおう。穀物に豆類やスキムミルク、砂糖、植物油を混ぜ合わせたFBFを使った料理が並んでいる。おかゆにしたりローストしたり。決して美味しそうに見えないが、それこそ命をつなぐ食事なのだろう。洗面器のような大食器に満載のおかゆを囲む、子ども達の表情は明るい。