団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

携帯電話の使われ方:世界と異質な文化 [ブログ時評70] (2006/12/10)

(「ブログ時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 国際電気通信連合(ITU)が12月初めに公表した「2006年版インターネット報告書」に並んだ指標から浮かぶ日本のイメージは何とも不思議なものだった。マスメディアがどの指標を取り上げるかで現れる姿が変わってしまう。新聞をいくつも購読している人なら、同じ報告書がソースだと思わなかったかも知れない。インターネット利用者は「米中に次いで世界3位」ながら「普及率は50%で世界22位」に過ぎなかった。携帯電話に焦点を当てれば「携帯電話普及率、日本は55位」と「第3世代携帯、日本が契約者数で世界トップ」が並び立っているのだ。

 報告書の原本にもリンクしている「日本のネット人口はもっと増えていいはず?世界のネット利用統計」(ミーム吉田のネットニュースクリッパー)は「人口比からするともっと普及する余裕はあるはず」と書いている。指摘にあるように携帯電話まで含むのだから、言われがちなキーボードアレルギーなど関係が無くなる。だが、使われ方が海外と大幅に異質なのではないか。

 携帯電話利用者は20億人に達し、今後2年すれば世界中で2人に1人が使うようになると予測されている。普及率トップのルクセンブルクは人口100人当たりで「155」もの契約があり、日本の「74」は遠く及ばない。海外では通話と簡易メールの単純機能に特化して「使い捨て」くらいの感覚が普通とも聞く。これに対して国内では「お財布機能」「音楽再生」「GPSナビゲーション」「ウェブ閲覧」「高画素数カメラ」に、今年はテレビが見られる「ワンセグ」まで加わった多機能・高機能オンパレード。

 「台湾の学生の半数の毎月の携帯使用料金は」(香港GSM/3G携帯情報局BLOG)は携帯電話とパソコンに対する、アジアでの感覚の差をこう伝えている。「台湾のニュースなどを読むと、『台湾の中高生の携帯電話(PHSも含むのでしょう当然)の所有率は90%で、毎月使っている料金は半数が500元以下』とのこと。すなわち平均的な学生は月2000円以下しか使っていないわけです」「若者だって普通にPCいじっているのがアジア各国ですから、『携帯電話の狭い画面でしか見れないものにお金を払う』より『PCの大画面で無料を楽しむ』というのが現実ではないでしょうかね」

 高速通信が出来る第3世代携帯電話の契約者数は2005年で世界6000万人。日本が1779万人でトップであり、2006年になってさらに加入者が激増している。11月末の電気通信事業者協会の「契約数」から計算すると5800万を超えていた。国内では、この第3世代携帯電話契約者だけを対象にした携帯電話専用のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が力を持ち始めたのも2006年の特色だ。

 「モバゲータウンは次世代のミクシィになるのか?」(FPN)が紹介している「モバゲータウン」がそのひとつである。9ヶ月で会員200万人を集め、現在も毎月25万人ずつ増やしているというから驚く。「今回、本格的な十代(中高生+大位)を狙っているSNSが携帯電話SNSと言う形をとって現れました」「日本型SNSの実名登録+招待制は最近、限界が見え始め、陰りが出始めています」「ビジネスの視点から見れば、重要なのは実名か匿名かでは無く、参加者の身元確認や個人情報保護です。それが出来ないならばマイスペースやモバゲータウンのように自由登録制にすれば良いと考えられます」

 モバゲータウンは携帯電話会社の外にある「勝手サイト」だが、携帯電話会社自身もSNSに手を着け始めた。KDDIが手がけている「EZ GREE」がそのひとつで、11月にスタートして1週間で会員が10万人を突破したという。

 そのSNSでいったい何をしているのか。「絵文字も空気も読めません 10代がハマるSNS『モバゲータウン』を28歳(♀)が探検した」(ITmedia News)が好適なルポになっている。入会したらメールの嵐に見舞われ、「モバ彼・モバ彼女というバーチャル恋人で、メッセージ交換や掲示板・日記のコメントのやりとりだけで『付き合う』」関係を見る。「モバ家族」「モバ学校」まであって「携帯電話は、PCよりも身近で個人的なツールだ。そこで行われているコミュニケーションも、PC向けインターネットよりもずっと身近で親密で本音ベース。モバゲータウンでは、暇なら暇、寂しいなら寂しいと格好付けずに言ってしまえて、だべったりゲームしたりして時間をつぶせる。学生時代のサークルの部室のような印象だ」と報告している。

 2002年に私の連載第118回「iモードは日本でしか成功しない?」で日本の特徴として「急激な変化や行動を容認する『小金を持った、軽薄で好奇心に満ちたデジタル・ディバイド層の大量存在』は非常に稀である。その結果が大変な変化であっても気にしないのは、本物の保守主義が存在しない日本だからだ」と書いた。その最後に引用した英国調査会社の予測では、iモードサービスが2006年までには西欧でも普及するはずだったが、現在も苦戦が続いている。どうやら相当に深いところから世界と異質な文化を、我々は持っているらしい。



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