団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

医療再生へ、無意味な『打開への道』 [BM時評] (2008/06/22)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 今日22日の朝日新聞3面を開いて、どっと脱力感に襲われてしまいました。「医療再生へ 危機感共有、あとは実行」「打開への道は明らか」と見出しだけは躍っていますが、どうやって実行するのか全く分かりません。ネット上での記事紹介がないので、図示している「シリーズを通して示した対策は」を引用しましょう。

 《すぐに効果が望めること》
・看護師の業務拡大や医療事務職の導入などで医師は治療に集中を
・子育てや介護に配慮した短時間勤務の導入を
・病院ごとに医療の質がわかるよう情報公開を
・救急外来への集中を減らすため24時間電話相談窓口を
 《将来に向けて取り組むこと》
・医学部の定員増を。特定の診療科に偏らないよう専門ごとに定員を。
地域を支え、医師を派遣できる病院を
・総合的な診療ができる「家庭医」を地域に
・安全向上のため、事故死などの原因究明制度を
・健康保険料を支払えない所得層に軽減策を
・医療費抑制策の見直し。医療費の無駄を省き、財源を含めて国民的議論を

 記事最後に置かれたまとめの文章はこうです。「崩壊を防ぐためにやるべきことははっきりしている。あとは、本気になるかだ」

 前半の直ぐにやるべき項目にせよ、誰がどう予算を付けて実行するかが難しいから実現しないものばかりです。もし全ての病院が国立病院ならば一気に突っ走れる可能性はありますが、実態は私立病院をはじめとした様々な経営体であり、病院収入は結局は患者の医療費としてしか入ってこないので職場環境の改善ですら一律に進むことはないでしょう。「本気に」と書くのなら、どういう道筋で実現できるのかまで踏み込まないと、無意味だと思えます。

 情報公開の部分はこの記事の識者談話に出ている川渕孝一・東京医科歯科大教授の所から派生したものでしょう。しかし、問題は病院の情報公開ではなく、医療費全体の情報公開です。官僚が勝手に主張する医療費膨張論について、最近、毎日新聞が「医療クライシス:脱『医療費亡国論』/1 かさむ費用」で「医療経済学の専門家らが参加し、06〜07年に開かれた厚生労働省の『医療費の将来見通しに関する検討会』」「世間が国から聞かされてきた『高齢化で医療費はどんどん膨張する』という“常識”とは正反対の内容を語った」と伝えています。「厚労省の担当課長すら『医療費の自然増の最大の要因は、(高価な薬や機器、治療手段が開発される)医療の進歩であることは明白だ』と明言した」

 高齢化によって医療費が際限なく膨張するとの議論は、増税のためにする議論だと疑ってみるべきです。先月リリースの第160回「年3000億円の大浪費・コレステロール薬」はまさに高価な薬の無駄を証明するために書いた仕事です。時間を見つけてさらに発展させるつもりです。厚生労働省や医学界が製薬会社などとの繋がりを断って、こういう無駄を省けないのならジャーナリズム側が立ち入っていくしかないと思います。

 そして、気になるのが朝日の記事に出ている川渕教授の発言。「医療に『ムリ、ムダ、ムラ』はないのか。それを明らかにする責任は医療界にあるのではないか」です。それなりに正しいとは思いますが、この方は国立医療・病院管理研究所で医療経済研究部主任研究官などをされていますから、医療費分析の専門家ではないのでしょうか。それでも医療費の闇が見えていないのだとしたら、個人情報以外は洗いざらい公開させるよう求めていくしかないですね。



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