団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

第171回「世界不況を契機に経済成長神話見直そう」 (2009/01/04)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 オバマ次期大統領は3日、300万人分の雇用創出などを柱とする経済政策を発表しました。読売新聞の3日付インタビューで、クルーグマン・プリンストン大教授が「今はまず、政府・中央銀行による救済策が必要だ。大規模な財政出動や慣例にとらわれない金融政策などの対策を打たなければ、不況はこの先何年も続くだろう。新興市場にも深刻なダメージを及ぼし、金融システムに深い傷を残す。一時的な巨額の赤字をためらうべきではない」と述べているのに対応する政策でしょう。20日の大統領就任後に数十兆円規模の景気刺激策を取りまとめる模様です。

 昨年末の第170回「世界消費総崩れに中国だけ軽傷説は疑問」で、中国も57兆円規模の内需拡大策を打ち出していることを紹介しました。米中両国が本気なのは分かるのですが、この大不況は単に克服すれば良いことなのでしょうか。経済成長を元の軌道に戻せば、地球上に存在する資源は有限なのですから遠からず壁がやってきます。

 宮本憲一さんの『環境経済学新版』(岩波書店)で、インド独立の父、ガンジーが「インドが英国と同じことをすれば、地球がいくつあっても足りない」と主張し、地域に根ざしたネットワークを生かす経済発展を志向した話を読みました。映画「ガンジー」で見る質素な衣服の意味をようやく理解できました。宮本さんはこうした経済の在り方を「内発的発展」と定義しています。

 大紀元時報の「2008年中国国内失業者数、2・5億人に達する恐れ」は「政府は毎年2400万人の雇用機会を創出しなければならないと計画しているが、しかし人材需要に関しては、毎年8%から9%の経済成長率を持続していくには現有の労働力の上、1200万人の新たな労働力があれば十分だという試算がある」と伝えています。この通りならば中国の内需拡大策はもう破綻している事になります。

 「毎年2400万人の雇用創出」とは中規模国の産業社会を毎年、造りだしていくようなものです。この目標がそもそも異常です。「中国、百万都市が220に増えて変わること」にある「2025年までの17年間で、現在の全米人口を上回る3億5000万人が農村部から都市部に移動する」「新たな都市移住者の受け皿となるのは、人口1000万人以上の8つの巨大都市、及び500万〜1000万人の15の大都市」も異様としか言いようがありません。

 一人当たりGNI(国民総所得)は2007年で中国が2360ドルです。米国や日本に比べれば10分の1以下でも、インドの950ドルよりかなり進んだ状態です。これは平均であり、中国の沿岸部や都市部ではもっと高いはずです。むやみに経済発展を続けても達成できない、異常な目標を諦めて、今ある物を仲良く分け合う原理の社会に戻さないと、国民の失望感だけが膨張していくのは目に見えています。

 米国の自動車ビッグ3救済は、政府による資本注入もあり得ると伝えられました。第169回「自動車戦争、日米とも愚かな終幕に」を読まれた方なら「それはない」と思われるでしょう。全産業平均の2倍を優に超える1時間当たり報酬を得ている、高給の自動車労働者です。緊急融資ではなく資本注入するのなら、国営の企業がそんな高給取りを抱えるような、非常な違和感です。ワーキングシェアを導入してでも、販売減で解雇された自動車労働者を抱え直すのなら、雇用創出として説明できるでしょう。米国でも過去の考え方を改め、分け合うことを考える時期が来たと思います。

 米国流グローバリゼーションは破綻したのに、不況克服の先がまたそれであるはずがありません。この経済苦境を経済発展至上主義から持続可能な世界と社会に軌道修正するために与えられたチャンスと捉えて、今年は変化の芽を見つけていきたいと思います。

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