映像生活、私的にもある最近の変転事 [BM時評]

 日本映画製作者連盟から「2008年映画産業統計」が発表になっています。詳しい分析は「TRiCK FiSH blog.」の「2008年度日本映画産業統計を読む」でご覧になって下さい。私が気になったのは末尾に置かれた「劇映画のビデオソフトによる販売と鑑賞人口推定 平成20年(2008年)」で、売り上げ、鑑賞人口とも前年比9割程度に縮小している点でした。以下に引用します。

1. 小売店舗売上 3,613億円 (前年比88.8%)
2. 映画鑑賞人口 6億9,733万人 (前年比91.3%)
3. メーカー売上 2,174億円 (前年比87.3%)

 2008年、映画の劇場入場者は1億6049万人で、前年比98.3%とまずまずの成績でした。しかし、ビデオソフトによる鑑賞人口の減り方は7億6377万人が6億9733万人に減ったのですから、半端ではありません。日本映像ソフト協会のウェブにある「ビデオソフトの売上金額の推移グラフ」を見ると、2004年をピークに縮小傾向にあります。このグラフには、レーザーディスクが20世紀の間はかなりの力を持っていたのにDVDの登場で一気に駆逐された様子が描かれています。レーザーディスクプレーヤーの生産終了をパイオニアが告知したのが、先月半ばのことでした。

 ビデオソフトによる鑑賞人口の減り分がどこに行ったのか、それはネット上のオンデマンド・ビデオサイトだったり、動画共有サイトだったり、あるいは第155回「テレビ局独占から脱したHDビデオ番組」で紹介した「ビデオポッドキャスト」や、そこから発展した「HDポッドキャスト」あたりなのでしょう。

 最近、伝説の名歌手マリア・カラスの日本公演の録画テープを棚の奥から見つけだしました。亡くなる数年前、1974年のこと、カラー映像が極めて少ないカラスですから貴重品です。録画してあるのは、90年代にFM放送用のステレオ音声とドッキングして再放送されたものです。久しぶりにカラスにはまってきて、YouTubeならもっとあるだろうと探してみました。面白いように出てきます。日本公演の映像は赤い衣装ですから直ぐに見分けられます。他は50年代、60年代のモノクロ映像ばかりかと思いきや、もう1系統のカラー映像が出てきます。

 日本公演は世界ツアーの最後でした。日本に来る途中のコンサート映像がアップされています。こちらは白いドレスに紺色のケープです。彼女のファンなら愛してやまない「Suicidio!」もあります。この劇的な曲をピアノ伴奏だけで歌うのは痛々しい感じがします。そこで一工夫した方がいらっしゃり、「Maria Callas - Suicidio! - New! Wonderful video!」の登場です。音声だけは最盛期のオーケストラ伴奏録音から取ってきてカラー映像と見事にシンクロさせています。全盛期にもこんな表情で歌っていたのだろうと、納得してしまいました。良い映像記録が無いカラスだけに掘り出し物と申し上げておきましょう。