第175回「続・離婚減少は定着、熟年離婚の嵐吹かず」

 1月末に第172回「離婚減少は定着、熟年離婚の嵐吹かず」を書いてから気になり続けていた離婚率減少傾向について、先週土曜日の朝刊3面に記事を書きました。今回はウェブでの問題意識が先行しているケースですから、本業の仕事と抵触しない範囲でウェブ版の続報を書いてみます。結論は次のグラフの通り、2003年からの経済状況好転にシンクロして減少傾向が現れたのでした。  1980年代にも83年をピークにして離婚率減少が現れています。グラフから判るように、この時も好況下でした。今回減少はその再現だろうとみられています。特に失業率とピークがぴたりと合っているのが特徴的です。前回はピークがずれていました。調べる上で離婚率増加についての研究は多数、見つかるのに、減少傾向についての研究がなかなか出てこないで難儀しました。社会学の方でも減少そのものに懐疑的な立場をとる場合もありました。有配偶者の離婚率が国勢調査の年にしか計算できないので、2000年と2005年では顕著な差が出ないためです。

 結局、「Google Scholar」も使って国立社会保障・人口問題研究所に「少子化の要因としての離婚・再婚の動向、背景および見通しに関する人口学的研究 第2報告書」なるものがあると知りました。これは所内研究報告で第1、第2報告がありますが、図書館などにも配られておらず、ネットからはもちろん読めません。この研究プロジェクトが離婚率減少傾向を分析してくれていたのでした。

 2005年に離婚率減少傾向が見えだしたころ、2007年、2008年の厚生年金分割制度スタートが準備されていました。「潜伏する離婚予備軍〜年金分割待ち予備軍だけでも2.3万組、潜在離婚率は現実の1.5倍」のように、2007年を待ち受けて熟年離婚の嵐が吹く――と言われたものですが、2007年も2008年も離婚率は下がりました。分析によると熟年夫婦に特別な動きは観察されなかったのでした。最高裁の「離婚時年金分割に関する事件の概況 平成19年4月〜12月」でも分割の申し立ては7千件台でした。

 さて、経済激動、大不況突入で失業率急増は必至です。これからどうなるのでしょう。不況が酷すぎれば、離婚しても職がないので離婚できないという事もありそうです。また、近年の社会意識調査の多くが家族を守り、維持する方向を示している事実もあります。博報堂生活総研が最近、提唱している「第三の安心・社会を修理する生活者」は「98年の金融ビッグバンを契機に、GDPは急落。実収入も減少し、完全失業率も4%台へ」「しかし生活者は【賢力】を駆使し、この環境変化に対応します。子供への教育投資や夫婦関係、家族関係の深化、地域生活の見直し」という「まわり固め」があって、さらに「みんなでつくる世の中の安心」へと関心が向いてきたとします。日本の家族の行方を注視しましょう。