グーグル著作権訴訟、包囲網が急速に形成 [BM時評]

 Google Books訴訟の和解案について、米国の司法省と著作権局が相次いで反対を表明しました。マイクロソフトやヤフー、アマゾンなどが8月末につくった「オープンブック同盟」もグーグルの独占を警戒して、書籍デジタル化は開かれた環境の下で進めるべきだと主張しています。対グーグル包囲網が急速に出来上がり、世界のほとんどの国の著作権者が参加するか、態度を決めるように求められた「和解案」が元のまま実施になる可能性は薄らいだようです。

 朝日新聞の《グーグル著作権訴訟、米司法省「和解案、退けるべきだ」》は「(1)書物へのアクセスを簡便にするのは、民事訴訟よりも立法措置がふさわしい(2)公正な市場の確保が重要(3)集団訴訟の手続きが守られるべきだ」と司法省の見解を伝えています。独禁法違反の捜査中であることも問題のようです。

 INTERNET WATCHの《「Google Books和解案は議会で扱う問題」米著作権局長が反対意見》は今回の和解案は非常に強力な権限を持ち「一種の“司法による強制許諾”とみなすことができると著作権局は主張する」「著作権法における強制許諾は、これまで議会が定める領分とされてきた。これはあまりに大きな影響を与えるため、慎重な考慮が払われてきたためだ。議会は一般に強制許諾には慎重であり、強制許諾が認められるのは市場原理が失敗した場合に限られる。その場合でも、すべての関係するステークホルダーとの間で公開の場で審議が行われ、それら関係者の要望が適切に満たされた場合に限られているとしている」と伝えています。

 一私企業が司法の場を利用して、世界中の書籍の著作権を有無を言わせずに使ってしまえるようにする今回の和解仕組み自体が異常なものでした。米国政府がこれは危険だと判断したのですから、グーグルが思うようにはならないでしょう。

 CNET Japanが8月に流した「Googleブック検索が文化にもたらす負の作用――前フランス国立図書館長が講演」も示唆に富んでいます。「今日までに1億3000〜5000万タイトルが出版・印刷されているなかで、これらの順位付けをどのように行い、取捨選択するか。また、米国の一私企業であるGoogleが主導することにより、アングロサクソン系の文化が優遇されてしまうのは自然な流れだ。これは単純な善悪の問題ではなく、文化の多様性のために避けなければならないことだった」

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