第187回「信頼性無し、もんじゅ運転再開は愚の骨頂」 (2009/10/07)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 液体ナトリウム漏れ事故を起こし、13年も停止している高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開を目指す動きが急です。総選挙のさなかに年度内に再開の方針が伝えられ、9月半ばに「もんじゅ運転再開審議でPT設置 原子力安全委」(福井新聞)が報じられました。超長期に止めていた原発を動かす不安が大きい上に、建設した旧動燃の技術水準が信頼できぬ証拠は積み上がるばかり。運転再開は愚の骨頂です。

 安全委のプロジェクトチームは六ケ所核燃再処理工場に次ぐ異例の設置で「10月中旬か下旬に、保安院が確認すべき『視点』を提示する。その上で、11月以降にもんじゅで現地調査も行い、原子力機構の報告や保安院の評価が視点に沿ったものかどうかを確認する」といい、自ら乗り出して行かざるを得なくなっています。

 これほど心配されるのには理由があります。9月8日開催の「政策評価・独立行政法人評価委員会 独立行政法人評価分科会」で「今度のもんじゅの再開というのは、次に問題を起こすと日本から高速増殖炉が消えてしまうという危険性も含んでいる。そういう意味でも万全を尽くしていただきたい。文部科学省から機構に対してどのような指示を出し、どこが改善されて見直し当初案として出てきたのか」「もんじゅについては、13年間も止まっていたものが急に動き出すと不具合が起きても不思議ではない。文部科学省としても自信を持って再開できるという宣言を出していくような意気込みでやっていただきたい」と強い危機意識が噴出しました。

 運転再開は何度も延期になり、一番新しいトラブルは「もんじゅ:漏えい検出器の交換すべて終了−−敦賀 /福井」(毎日新聞)が取り上げているナトリウム漏えい検出器の誤警報作動です。不具合は4割を超す148本にも上り、1年半かけて全部を改良型に交換しました。検出器は電極の先に10ミリの隙間が必要なのに、電極を無理に押し込んで隙間を無くしていたのが原因でした。施工時にこれほど多数のミスがあるのは異常です。いや、ミスではなく、取り付け作業をした側が検出器の技術と構造を理解していなかったと考えるべきでしょう。

 高速増殖炉という先端技術を担っているはずの機関(現在は日本原子力研究開発機構)に、そんな愚かしいことがあり得るのでしょうか。2003年に書いた第130回「もんじゅ判決は安全審査を弾劾した」で、旧動燃内部にいる「読者」から、機構が自ら設計をしないで外部に丸投げする体質が告発されたと伝えました。読者と幹部職員とのやり取りは秀逸なので以下に再録します。

 「ちゃんと設計した上で、発注すべきだ!」
 「そんな設計できない。」
 「ならば,外部に出して設計し詳細設計を機構の所有として、あらためて発注できるでしょ!」
 「機構の設計としてもし何か有った場合、責任が持てないからダメだ!!」

 ナトリウム漏れを起こした段付きさや管でも、事故があってから「そんな風に使うと説明は無かった」と下請け側が言い出していました。驚くべきことに、丸投げすると言っても周到な設計条件を示さずに発注しているのです。プラモデルを作るように、部品を発注して組み合わせれば何とかなると、旧動燃は考えていたようです。冷却系に高温の液体ナトリウムを使う、日常的にはありえない厳しい条件下ですから、全体を理解した上で細部の設計・施工にも目を光らせる技術者が必要です。上記のやり取りを見れば、そんな能力がある技術者が存在するはずがないでしょう。

 もんじゅは「トラブルの伏魔殿」と称してよいと思います。次にどんな破綻があるのか、想像できません。こんな怖い巨大装置をよく動かす気になるものです。ダム問題と同様に、これまで大きな資金を投下したから続けているだけです。大幅な完工延期が決まった第180回「敗因は何と工学知らず:六ヶ所再処理工場」といい、国策原子力開発は悲惨な様相です。

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