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第208回「文系も理系も高学歴プアー:年上世代は身勝手」 (2010/06/30)

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(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 この国の高学歴プアーは文系にも広がろうとしています――11月から司法修習生への給費打ち切りの記事が、マスメディアでたびたび取り上げられています。理系ポスドクの就職難が厳しくなる中、今週は22年度科学技術白書がネット公開されて、過去の詐欺に等しい失政を反省することなく「国際的競争には博士号取得者の増大が重要だ」と厚かましくも主張しています。政策を決める年上世代は既得権益に守られて温々とし、若い世代の人生がどうなろうと知ったことかと構える身勝手さ。日本の政治家、官僚はどうかしていませんか。

 例えばMSN産経ニュースの「司法修習生はつらいよ 『給与なくさないで』支援本格化」は「新人弁護士の半数以上が法科大学院の奨学金などで平均300万円の借金を抱え、一部は弁護士になっても収入がほとんどないという実態がある。給費制がなくなればさらに借金が増えるのは確実で、『社会のための仕事ができなくなる』と訴えている」と伝えました。

 月20万円の給費が貸与制になれば、専念義務でアルバイトを禁止されている司法修習生の間にさらに借金が膨らみます。検察官や裁判官になれば収入は安定しますが、弁護士の場合は司法制度改革で数が急に増えたため司法修習を終えても職場が見つからず、家族に養ってもらうケースさえ出ています。スタート時の借金が増えればお金になりにくい人権派の仕事など、さらに手が出せなくなるでしょう。従来の弁護士像は崩壊しつつあります。

 22年度科学技術白書の「第2章人を活いかし知をつなぐ科学・技術システム」は「我が国の自然科学系の博士課程入学者数の推移を見ると、平成3年以降、大学院重点化に伴って増加していたが、近年減少傾向に転じており、平成15年の13,190人をピークとして平成21年には11,348人に低下している(第1-2-4図)。また、修士課程から博士課程への進学率の推移を見ると、近年低下傾向にあり、特に、理学及び農学分野の低下が著しい(第1-2-5図)」と表現しています。理学系の博士課程進学率は1991年の31.1%が2009年には18.6%にまで落ちています。

 博士課程が不人気なのは修了後の身分があまりにも不安定だからです。平成14〜18年度修了の理学系一般学生7513人の進路が集計されています。大学教員585人、ポストドクター2811人、教師・公務員・医師159人、民間企業1128人、公的研究機関277人、その他の就職者543人、学生(留学など)356人の他に「不明等」が全体の2割を超え、1654人もいるのです。彼・彼女の人生はどうなったのでしょう。ポスドクからもさらに不明等が生じます。農学系なども似た状況です。「博士課程修了直後に定職に就くことができない可能性や、ポストドクター期間が長期化していることは、修士課程在籍者が、博士課程進学を検討する際の懸念材料となり得る」という切実感がない分析が空しく響きます。

 「博士課程学生が同年代の就職者に比べて経済的に厳しい状況におかれ、望ましい能力を持つ修士課程在籍者が博士課程進学を避ける要因となってはならないことから、博士課程学生への支援を充実することが不可欠である。米国では、大学院生の約4割が生活費相当額の支援を受けている」しかし、日本では「年間180万円以上の支給を受けている博士課程学生の割合は15%程度にとどまっている」のが実情です。大学院時代に奨学金で何百万円かの借金を作らざるを得ない状況を改善しなければ、国全体でみても科学技術の明日は厳しいでしょう。

 司法制度改革で合格者数を急増させて、給費がかさみすぎると打ち切られる司法修習生。大学院重点化で定員を倍増した上で、大学教職の枠や無償奨学金を絞った理系博士課程修了者。どちらも制度をいじる側の身勝手な思惑から生まれた問題です。第120回「負け組の生きる力・勝ち組の奈落」 の第3節「◆大学院重点化は一種の“詐欺”商法」に詳述してあります。科学技術白書はいまだに積極的に解決する気はなく「大学教員の年齢分布を見ると、団塊の世代の大学教員数が前後の世代に比べて多く在籍しており、平成24年ごろからこれら団塊の世代の大量退職が見込まれることを勘案すると、これを契機に各大学・大学院は若手教員の採用数を増加させることも可能となる」と希望的な観測を述べています。

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