大卒若者就職難のネット論議がホット展開 [BM時評] (2010/08/08)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 読売新聞が6日に出した記事「大卒2割 就職せず…今春10万6000人」を巡って有力ブロガーらが取り上げ、ネット論議が盛り上がっています。この記事は「就職留年7人に1人、これも高学歴プアー」で紹介した今春の就職難規模が、文部科学省公表の学校基本調査ではさらに悪化していて、大学を卒業しての進路未定が10万人、留年も10万人に膨れあがっている話です。読売新聞のグッドジョブです。

 「茂木健一郎 @kenichiromogi さんの日本の就職連続ツイートとその反響」には「大学3年の夏から、実質上就職活動が始まる日本の慣習は、明らかに異常である。学問が面白くなって、これからいよいよ本格的にやろうという時に、なぜ邪魔をするのか」「新卒一括採用という慣習は、経営的に合理性を欠く愚行だとしか言いようがない。組織を強くしようと思ったら、多様な人材をそろえるのが合理的である」「日本の企業がiPadのような革新的な商品、googleやyoutubeのような革新的なサービスを出せない理由の一つに、大学3年から従順に就職活動をするような人材しかとっていないという事実がある」など。これまでもサイエンスやオピニオン系の取材をして、多くの研究者からたびたび聞いている趣旨の発言が含まれています。

 「内田樹の研究室」の「日本の人事システムについて」に多数のはてなブックマークが付きました。やはり新卒一括採用に疑問を呈しますが、従来とは目線を転換した発言です。「現行の就活は、『優秀な人材の登用』よりもむしろ、日本の若者たちを『組織的に不安にさせること』を結果として生み出していることを、企業の人事担当者はもう少し自覚して欲しい」「いまの雇用システムでは、『きわだって優秀な人間がそれにふさわしい格付けを得られない』ことよりも、『ふつうの子どもたちが絶えず査定にさらされることによって組織的に壊されている』ことの危険の方を重く見る」「正直言って、私は日本人がiPadを発明しなくても、YouTubeを発明しなくても、別に構わないし、それをとくに恥じる必要もないと思っている。それより、ふつうの人たちが等身大の自尊感情を持って暮らせる社会を確保することの方が先決ではないかと思う」

 確かに苦しんでいる若者の心に響くのでしょう。しかし、はてなブックマークを辿ると「新卒一括採用の是非」(nonomachon2ndの日記)は「新卒一括採用は悪だから廃止すべしといっても、廃止されて一番困るのは当の若者だ。新卒一括採用がなくなればアメリカやヨーロッパのように若年失業率は跳ね上がる。経験者たちと同じラインで就職活動するわけだから当然の帰結。若者が負うハンデは消えることはない」と現実問題を指摘をしています。「卒業後も自らを高める余力があるのは結局金持ちの子だけだ。貧困な大半の子は働かざるをえない。でも新卒一括採用がない。何かの専門能力を高めなければならない。でも仕事につけないのだから専門能力も高まらない。じゃあアルバイトでもするしかない。アルバイトで生活していくには正規労働者の1.5倍は働かないといけない。結局働きづめでいつまで経っても貧困から抜け出せない」

 読売新聞の記事は「国公私立の別では、私立が約9万3000人と全体の9割近くを占めた。また、進路未定者の6割超はいわゆる文系で、『私立文系男子』の苦戦が目立った」とも伝えています。「池田信夫 blog」の「大卒はなぜ職にあぶれるのか」は「経営者に『新卒一括採用はよくない』などと説教したって始まらない。それは日本的雇用慣行の中核にある年功序列システムの一環であり、人事システム全体を変えないで新卒一括採用だけをやめることはできない」と突き放していて、若者には評判が良くないようです。結論である「大学生の供給過剰は文科省がコントロールできるのだから、早急に対策をとるべきだ」は読売記事のこの部分と呼応していると観るべきでしょう。

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