検察審再議決、マスメディアの困った論調 [BM時評]

 小沢一郎・民主党元代表をめぐる政治資金規正法違反事件で、東京第5検察審査会が2度目の議決をし、小沢氏の強制起訴が決まりました。読売新聞の社説《検察審再議決 小沢氏「起訴」の結論は重い》をはじめとしてマスメディアは再議決に乗った形の論調を展開しています。予想はしていましたが、こうまで横並びだとはがっかりです。

 読売社説は「『有罪の可能性があるのに、検察官だけの判断で起訴しないのは不当で、公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけるべきだ』とする検察審の指摘を、検察は重く受け止めなければならない」と主張するのですが、司法の取材を担当した経験があれば暴論としか思えないはずです。これでは起訴のハードルが限りなく下げられ、起訴される事件が大幅に増えるでしょう。日本の司法制度が根底から狂ってくることになります。

 「情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)」の《小沢起訴は、検審が「国民の責任において、公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度」だから》は「検察審査会は、有罪であることが明確であるにもかかわらず、起訴していない事例についてのみ、強制起訴の判断をなすべきであることも明白だ」「秘書が5年前に小沢氏に報告したか、どうかを裏付けるものはない。密室での取り調べの中で報告したとの供述があるようだが、その後訂正されている。5年前のことについて記憶がゆらぐのは当たり前であり、物的な証拠もなしに、100%近い確率で有罪にできると言い切れるだろうか」と指摘、「検察審査会は、超えてはならない一線を越えたように思う」と述べています。

 読売社説の結語は「無責任な検察審批判は慎むべきだろう」ですが、この議決をきちんと検証できない論説委員しかいないのなら、新聞社に論説委員室などという組織は全く不要です。

 【参照】第199回「政治家とマスコミの愚、公認会計士が直言」