『新政権を育てるのに失敗』年賀状での心配事 [BM時評]

 年賀状で何人かの方に「マスメディアは新政権を育てるのに失敗しました。その自覚が無い点が心配です」と書きました。民主党政権の混迷ぶりには困りますが、「政治とカネ」という政治部記者が条件反射で飛びつくテーマに集中し続け、本格的な政権交代で待望された国家戦略の転換をアシストする役割が国内の既成メディアには見えなかったと評するしかありません。年金・医療など社会保障、農業と貿易の問題、内需拡大と成長戦略といった緊急を要する大きな政策課題に成果を上げさせねば、政権交代の意味そのものを失わせ、長く尾を引く後遺症になると心配します。

 年明けの新聞論調には民主、自民両党が協調して乗り切るべし――といった感じがあります。しかし、大きな政策が無いのに、ほころびを繕うだけの協調をして何になるのでしょう。また、解散総選挙というお決まりのフレーズが見られるようになりましたが、大敗北を喫する側が衆院解散に打って出るはずがありません。読者・視聴者から一定の付託を受けている既成メディアがジャーナリズムの役割を考えずに「空騒ぎ」を続けることは、メディアとしての自らの寿命を縮める結果に繋がります。

 政権発足から1年以上を経過して、きちんとした政策ブレーンを形成できない民主党は叱責されるべきですが、既成メディアも自民党政権時代と違って政権批判ばかりでは駄目なことを知るべきでした。今年1年はまだ時間を使えます。頭を使わなくて済む「政治とカネ」なんか脇に置いて、政策課題にスポットライトを当てて課題解決へのステップを具体化していかなければなりません。ジャーナリズムは市民社会のために存在しているのであり、騒ぐことそれ自体を喜んでいる現在の既成メディアは王道から外れつつあります。

【参照】第332回「有権者の信賞必罰投票とマスメディアの漂流」 (2012/12/15)
    第372回「自民の超大勝を有権者は望んでいなかった:参院選」(2013/07/24)