東電工程表の水棺方式に頼っては危険、長期化 [BM時評] (2011/04/18)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 福島原発事故で東電が収束に向けた工程表を発表しました。ステップ1では原子炉内の核燃料の高さまで格納容器全体を水で満たす「水棺方式」を当面の切り札にし、これまで前面にあった原子炉冷却機能回復は検討課題に格下げされました。東電発表「道筋詳細版」の行間には、事故から1カ月、思惑通りに進まない現状がにじみ出ています。

 格納容器下部が破損している2号機は水棺方式適用の前に漏れ出している穴を塞がねばなりません。そのために粘着質セメントの充填を考えているそうです。私の持つ技術常識では、現に水圧がかかって漏れ出ている場所に注入して硬化し、水漏れをシャットアウトする素材を知りません。水中固化させるにせよ、一定の養生が出来てから使えるものになるはずです。「注入、即、実用強度で密着」といった好都合な素材があれば過去のトンネルなどの難工事がどれほど助かったことか。

 2号機の収束にこの方法は無理があると指摘した上で、格納容器が「健全」とされる1、3号機でも危険だと思えます。健全だと言っても東電の格納容器はザルに近い存在だと考えられるからです。今回の事故で最初に書いた「福島第一原発は既に大きく壊れている可能性(追補あり)」の時点から、核燃料の温度が上がって多少でも損傷するたびに、発電所正門付近の放射線量が敏感に上がる現象が観測されています。これは格納容器が表向き「健全」であると言われながらも、密封性には甚だ疑問があることを示しています。

 1号機の原子炉建屋は特に高汚染で人は立ち入れないと言われます。水棺方式にして高さ3、40メートルある格納容器の「首」のところまで水を満たし、結構な水圧がかかる状態なのに、見回りも出来ないのでは危なくて見ていられません。東電も事前確認なしに水を溜められないでしょう。

 検討課題に格下げされた冷却系の回復を、旧設備の復旧ではなく外部冷却装置追加の形でいいから急ぐのが王道だと考えます。容器損傷している2号機対策もこれしかありません。この際、特注品である必要はありません。日本ですから既製品の在庫があるはずですし、どこかのプラント向けに造られている製品でも流用・転用をお願いして駄目と言われることはないでしょう。

 最低半年から9カ月とされた安定までの期間が、実証されていない水棺方式に頼ると止め処なく長引くのではないかと恐れます。避難半年でも職住を含めた生活再建は厳しいのに、1年とかになれば限度を超えます。避難の数万世帯で避難先に居ついてしまう方が多くなってしまいかねません。

このエントリーを含むはてなブックマーク   ※関係の分野別入り口・・・《科学・技術》 《環境・資源》


【リンクはご自由ですが、記事内容の無断での転載はご遠慮下さい】
※ご意見、ご感想や要望はメールフォームで。

【INDEXへ】
無料メールマガジン登録受付中