第271回「高速鉄道大事故でも運行停止しない中国政府」 (2011/07/24)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 落雷によって停車中の高速鉄道列車に後続が追突、脱線して35人の死者を出す大事故が中国で起きました。人間が作ったものには欠陥があるもので、いずれ真相が明らかになると思いますが、中国政府が運行停止を命じないのは解せません。原因が分かっていて対処できているのならともかく、よく分からないけれど衝突してしまった状態なのにもかかわらず時速200キロ、300キロで運行を続けるとは自殺行為です。日本国内で起きていれば許されないはずです。

 NHKニュースの“落雷で故障 制御に異常か”がつぎはぎだらけの開発状況をこう伝えました。《今回の事故で停車していた車両は「CRH1」と呼ばれるカナダの企業の高速鉄道の車両をベースに製造され、追突し転落した車両は「CRH2」と呼ばれる日本の東北新幹線の「はやて」をベースに製造されたものです。そして自動制御システムについては中国が独自に開発したとしており、専門家によりますと前を走る列車との距離が7000メートルを切ると、後続の列車は信号を受信し自動制御システムが作動し次第に減速して追突を防ぐ仕組みになっているということです》

 今回、実際にはほとんど減速されていませんでした。衝突現場は上海よりも南ですが、追突列車は北京発で6月末に開業したばかりの北京・上海間を走った上でさらに南に向かっていました。北京・上海間でも制御システムは同じでしょうから、先行列車の停止を後続が感知できずに追突する恐れが大です。

 サーチナの《危険を生んだ中国高速鉄道の背景(1)「無茶な大躍進」》は、「ドイツ人が2−3カ月かけて学ぶ高速鉄道運転を中国は10日で学ばせた。ドイツ人トレーナーが『無茶だ』と言ったが、中国側は『10日で北京に返す』と話した」というエピソードを報じました。設備も人材も即席で形ばかりつければよいと鉄道部幹部が考えてきたことをうかがわせます。毛沢東の大躍進は機械力を持たなかった中国が人海戦術で乗り切ろうとした歴史です。中国高速鉄道は人手を掛けるのを惜しんでいるのですから話になりません。

 同じ中国で6月に《観光列車が衝突…落雷で故障、後続列車が追突=湖南・張家界》(サーチナ)が起きています。「現地当局は事故原因がはっきりするまでとして、同鉄道の運行停止を指示した」と、極めて真っ当な措置がとられています。「中国の高速鉄道:無理な開業で故障続発、客離れ」で「安全を何よりも最大限に追求すべき高速大量輸送機関を、政治がねじ曲げたツケをどんな形で払うことになるのか、想像できません」と指摘したばかりで起きた大事故ですが、ねじ曲げ続ければさらに大きな代償を支払う事になるでしょう。

 【追補】追突した後続列車の運転席がどう処分されたか、日本なら現場検証まで保存されると思いますが、朝日新聞の「事故車両の運転席、当局が現場の穴に埋める 中国脱線」は事故翌朝のとんでもない状況を伝えました。「空が明るくなり始めた午前6時ごろ、7台のショベルカーがすぐ横の野菜畑に穴を掘り始めた。深さ4〜5メートル、幅も約20メートルと大きい。午前7時半過ぎ、ショベルカーがアームを振り下ろし、大破した先頭車両を砕き始めた。計器が詰まっている運転席も壊した。そして残骸を、廃棄物のように穴の中に押しやってしまった」

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー
    第412回「中国重篤スモッグの巨大さが分かる衛星写真」(2014/03/02)など展開

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