野田新代表、何もせぬ民主党政権で終わる瀬戸際 [BM時評]

 政権交代2年で3人目の新代表、新首相として野田佳彦財務相が選出されました。野田氏は政権運営とは雪の玉を坂道で押し上げ雪が付着していく重みに耐えるモノなのに、現状は雪の玉が坂道を転げ落ちていると厳しい認識を示しました。1月の「『新政権を育てるのに失敗』年賀状での心配事」で憂慮した何もせぬ民主党政権が、大震災・福島原発事故でもどんどん後手に回り続けて見るべき成果をあげていません。民主党政権が何も出来ずに終わってしまう瀬戸際に立った新代表と言えます。

 財務相としての仕事ぶりは財務官僚の思惑に沿った感じが強かったと思えます。民主党が掲げた『政治主導』のにおいは薄いけれど、政治主導の意味も改めて問わねばなりません。政権交代以来、根拠を示さぬ、思いつきに近い『政治主導』で官僚組織を振り回してきました。一方で長い間、違う価値観に触れる機会を持たなかった官僚組織側の質的劣化も激しく、前例があるルーチンワーク以外の仕事には役に立たなくなっています。原発事故がその好例で国の安全審査が根底から覆っているのに、経済産業省は「原発は適法に運転されている」と言い張るばかりです。そんな主張は裁判になったら通用しません。

 代表選で対抗した海江田万里経済産業相は「修羅場をくぐった自分にしか判らないことがある」と主張しましたが、全くのお笑いぐさです。官僚の「保守」的な言い分を代弁しただけです。原発全電源喪失という大事故の進展を制御するには原子力安全・保安院の官僚では力不足は明らかですから、強力な技術スタッフを即席で整備して、司令塔を造るしか道はなかったのです。

 1月には「年金・医療など社会保障、農業と貿易の問題、内需拡大と成長戦略といった緊急を要する大きな政策課題に成果を上げさせねば、政権交代の意味そのものを失わせ、長く尾を引く後遺症になると心配します」と書きました。さらに震災復興と原発事故の後始末が加わっています。これでもなお小沢元代表をめぐる軋轢から党人事の方に民主党内やマスメディアの関心は向いていますが、冗談ではないと思えます。