第284回「福島原発冷温停止の虚構に共犯を続けるメディア」 (2011/10/23)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 福島原発事故で政府・東電から流された虚偽・虚構で、今後に尾を引きそうなものが「冷温停止」です。毎日新聞の《福島第1原発:冷温停止の定義に疑問…保安院に専門家ら》を見れば、保安院が招く体制派の専門家でも明らかに「ノー」を突きつけています。ところが、メディアの大勢はこれを無視して政府・東電と楽観的な虚構の共犯関係を続けるつもりのようです。

 毎日新聞から引用すると「工藤和彦・九州大特任教授(原子炉工学)は『本来の”冷温停止”は、圧力容器を開けても放射性物質が放出されない状態を指すもので、第1原発に適用すべきではない』と指摘。東之弘・いわき明星大教授(熱力学)も『(冷温停止の目安の一つの)圧力容器底部の温度は、内部の溶融した燃料の位置によって異なる可能性がある。内部状況をできるだけ早く把握するとともに、温度測定方法も検討すべきだ』と注文を付けた」となります。

 冷温停止は核燃料が圧力容器内にあって冷却が行われ、冷却水が沸騰しなくなった状態を指し、崩壊熱が減るのをゆっくり待つ状況です。1〜3号機で燃料が全面的に溶融して圧力容器の底が抜けたと認識される現状では、目安になる温度を圧力容器の底で測っていること自体が無意味です。圧力容器に残る核燃料が少ないほど温度は下がるからです。格納容器の底か、あるいはさらに深く地中に沈んでしまった溶融核燃料を探すのが焦眉の急だ、温度ももっと深いところで測れと専門家は言っているのですが、「経過は順調」の建前を崩したくない政府・東電はとぼけています。

 北海道新聞は社説《原発冷温停止 見極めに甘さは禁物だ(10月23日)》で「事故を収束させるには、原子炉の状態を安定させ、放射性物質の放出を食い止めることが何よりも大切だ。幕引きを急ぐあまり、達成時期の見極めが甘くなるようなことがあってはならない」「冷温停止状態は、放射能漏れがまったくないという意味ではない。こうしたあいまいな言い方では、国民は放射能が外に出ていない状況と誤解しかねない」「政府や東電はもっと丁寧に冷温停止状態の説明をするべきだ」と苛立ちをみせます。

 「もう嘘は止めよう」とはっきり言うべきです。溶融核燃料の深さ・位置によってどのような事態が起きる心配があるのか、国民に公式に説明せよと要求すべきです。現状ではどこへ行ったか見つけることは非常に困難ですが、起きうる事態を並べ上げることは可能です。その確率を推測することも幅を持たせれば出来るでしょう。放射能放出が増加に転じる可能性がどの程度あるかは、避難住民の帰還計画に響きます。

 事故半年の「説明責任を果たさない政府・東電・メディア」での小出裕章・京都大原子炉実験所助教のコメントを再録するとこうです。「溶けた燃料の溶融体が格納容器を損傷する可能性もある。その場合、溶融体が原子炉建屋の床を突き破って地面に潜り込んでいる事態もありうる。海洋や地下水に放射性物質が拡散しているかもしれない。溶融体が地下水に接触しないよう『地下ダム(遮水壁)』の建設を進めるべきだ」。早い時期からこの指摘はされてきましたが、遮水壁は2年後と緊張感が無い計画が言われています。

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