第303回「新安全基準は想定外を隠れ蓑にする欠陥品」 (2012/04/10)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 ストレステスト(1次評価)では炉心溶融のような過酷事故は考えなかったのに、にわかに出来た原発再稼働の新安全基準ではそこまで評価してあると野田政権は言っています。マスメディア報道では判りにくかった点が、発表資料原文を読んで判然としました。過酷事故は想定外として棚上げする福島原発事故以前の考え方に先祖帰りしているだけなのです。こんな欠陥品で、炉心溶融と水素ガス爆発を実際に見てしまった国民を欺いては困ります。

 3つある判断基準で騙しのポイントは「基準2」にあります。「今回の事故並みに、想定値を超えた地震・津波に襲われても、燃料損傷に至らないことの確認」が出来ることになっているから、過酷事故対策は先送りして事業者任せで良い――と能天気に構えられるのです。

 福島事故が明らかにした事故進展のポイントは、これまでは手を尽くしてある建前だったのに人間のミスや錯誤が簡単に防御の壁を乗り越えてしまう恐ろしさでした。1号機の最後の安全装置は運転員の誰も使用経験がなかったお粗末な笑い話ですが、3号機の場合は安全装置を運転員が誤って止めてしまい、2度と起動せずにメルトダウンに進みました。

 「判断基準に対する大飯発電所3、4号機の対応状況」で「基準2」部分を見ると、高台に設置した空冷式非常用発電装置からの電源供給など「これらの対策が、設計上の想定を超える地震や津波が重畳するような厳しい環境の下においても実施が可能であることを、以下のとおり現地調査を含めて確認した」と主張して、人間の錯誤などに突っ込むことなくお終いです。

 事故時対応手順書をどのように準備しようが、人間が易々とぶち壊しにしてくれた福島の教訓を、経済産業省原子力安全・保安院は学んでいません。事故以前の古い考え方に戻り、過酷事故に進む事象の経路はまず無いから「想定外」に祭りあげて構わないと見くびっています。関電も同じ構えで、ベントのフィルターや水素ガスの建屋からの排出装置設置など先のこととしています。事故や災害では想定しなかった惨事が起きることを忘れてはなりません。

 原発再稼働の新安全基準は、本来なら安全の総元締めである原子力安全委がお墨付きを与えるべきなのに、今は蚊帳の外です。しかし、安全委は昨年夏から過酷事故を扱うストレステスト2次評価が再稼働には不可欠との立場を変えていません。起きてしまった現実を見る目は保安院よりも確かなようです。「無謀・大飯原発再稼働へ4つの駄目」で指摘しているように、付け焼き刃の新基準で誤魔化せる問題ではないのです。

 【参照】インターネットで読み解く!「原発再稼働」関連エントリー

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