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第307回「大飯原発再稼働へ新潟県から鋭い安全性疑義」 (2012/06/10)

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(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 大飯原発再稼働に向けて野田首相が地元福井県の意向を丸飲みした記者会見をして、地元同意取り付けが可能になりました。しかし、首相会見に対してもう一つの原発大立地県新潟の泉田知事から鋭い原発安全性への疑義が提出されました。官邸ウェブにある首相の冒頭発言と、原子力発電に関する野田総理の発言に係る知事コメントは生煮えのマスメディア社説などを見るより、対比して検討しておく価値があります。

 安全性について首相の主張は次の部分に集約されています。「福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています」「これまで1年以上の時間をかけ、IAEAや原子力安全委員会を含め、専門家による40回以上にわたる公開の議論を通じて得られた知見を慎重には慎重を重ねて積み上げ、安全性を確認した結果であります」

 泉田知事の反論は論旨明解です。「福島原発事故はいまだ収束しておらず、事故の検証も進行中であり、換言すれば、意思決定過程や組織のあり方なども含めた事故原因の特定も行われていません。事故原因が特定されなければ、対策を講じることができないことは自明の理であり、専門家である原子力安全委員会も班目委員長が安全を確認していないことを明言しています。このような状況下で専門家でもない総理が安全性を確認できるはずもありません」

 対等に討論したら、野田首相側の旗色は極めて悪くなるでしょう。専門家による討論を何回重ねようが、事故の原因について究明・集約はされておらず、新安全基準の本質は応急対策をまとめたものです。

 さらに知事の反論は「『電源が失われるような事態が起きても炉心損傷に至らないことが確認されている。』との発言についても、現実には、『電源が失われなくても、炉心冷却に失敗すれば、大惨事になる』ということが福島の教訓であることを無視した説明です」と踏み込みます。

 『電源が失われなくても、炉心冷却に失敗すれば、大惨事になる』は分かりにくいかも知れません。福島原発事故ではこの文言通りの事態は無かったからです。全電源が失われた場合でも最後の命綱である非常用冷却装置があり、それをきちんと使えば炉心溶融から爆発・放射能流出の惨事は避けられたのに、結局は炉心冷却に失敗した事実を指すと考えられます。

 5日の毎日新聞《東電事故調:非を認めず 最終報告案「状況の把握困難」》がまさにその核心部分でした。爆発を起こした1・3号機についてです。

 《政府事故調(畑村洋太郎委員長)は昨年12月に公表した中間報告書で、1号機の冷却装置「非常用冷却装置(IC)」について「認識不足や操作の習熟不足があり、全電源喪失直後に弁が閉じて機能していない状態に気付かなかった」と指摘。バッテリーで作動する3号機の冷却装置「高圧注水系(HPCI)」の操作についても「代替注水手段が確保されていないのにHPCIを手動停止したのは、バッテリーが枯渇するリスクを過小評価し、(高圧のため注水できずにいた原子炉の)減圧操作に失敗した」と批判した》

 《これに対し、社内事故調の最終報告書案は、1号機のICについて「勉強会や試験などを実施してきた。弁の動作も電源喪失のタイミングによって開閉いずれの可能性もある」「弁の状態を認識し、対応するのは現実的には困難だった」と弁明。3号機のHPCIの操作についても、「損傷する懸念があり早急に止める必要があった」「減圧操作のための弁はわずかな電力で開けることができ、操作可能と判断した」と主張した》

 1号機の運転チームは誰1人として、この非常用冷却装置を実際に動かしたことがなかったのが実情ですが、発電所幹部は動いていると思いこんでいました。3号機冷却装置の停止は発電所幹部との十分な打ち合わせもなく、次の対策である海水注入を用意する前になされて、炉心溶融の引き金になりました。

 第300回「福島事故責任は誰にあるか、判明事実から究明」で検討した「大惨事にしてしまった事象の分かれ目」を考えるにつけ、「防ぐ仕組みが用意されているから安全」とは到底言えないと知れます。現実に非常用冷却装置は用意してあったのに、東電は不可抗力で使うのに失敗したと主張しているのです。野田首相が主張している安全対策は非常に薄っぺらいと言わざるを得ません。福島事故以前の考え方「危機対策は揃っている」でしかなく、東電の失敗ぶりを全くフォローしていません。

 【参照】インターネットで読み解く!「原発再稼働」関連エントリー

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