原因は語らず懸命努力説明ばかり東電事故報告 [BM時評]

 福島原発事故で東電は20日、「福島原子力事故調査報告書」を公表しました。膨大すぎて読み切れませんが、3基の原子炉が炉心溶融を起こすに至ったポイントに絞れば、襲ってくる難事態に東電側は懸命に努力した、とひたすら説明するものの、事故調査報告で必須である「そうなった原因は何か」に全く答えていません。

 最初に爆発した1号機について3月に書いた第300回「福島事故責任は誰にあるか、判明事実から究明」に、政府事故調の指摘を入れました。全電源喪失後に残る最後の非常冷却装置「非常用復水器」について「1号機の全運転員は非常用復水器作動の経験がなかった」です。このために非常用復水器が津波襲来後に動作していないことに遅くまで気付かず、最終的に冷却容量のごく一部しか使われなかったので炉心溶融を起こしました。

 東電報告書は「非常用復水器に関する教育については、日々の現場巡視や定例試験、OJTなどの中で行われており、その中で、その系統・機能やインターロックを把握している。また、津波襲来までは非常用復水器を用いて原子炉圧力制御を行っており、運転員は運転操作に必要な知識は有していた」と強弁します。動作が停止したのは電源喪失で自動的に弁が閉じる仕組みになっていたからであり、電源喪失下では中央制御室から弁閉鎖を発見するのは困難とします。

 1号機と同型の原子炉を運転する米国では、電源喪失時に弁閉鎖となるから運転員は手動で弁を開けに行く訓練をすることになっています。政府事故調の指摘も「電源喪失時に使ったことがあるのか」を問うているものであり、東電の「津波襲来前には使えていた」はピントはずれもいいところです。原子炉を開発した米国側が緊急時に必要としている運転員訓練を日本側に伝えないはずがなく、誰かが握りつぶしたとしか考えられません。

 誰が、どうして、そのような愚かな行為をしたのかを解明するのが東電の社内報告のはず。「交流電源、直流電源が喪失した場合の機器・系統の動きについて、非常用設備を中心に検討分析し、必要に応じて手順書や教育・訓練へ反映をすることが必要であると考えられる」という当事者意識が無い結論は噴飯ものです。原因を究明すれば責任を取らねばならない人物が出ます。それをひたすら避けているのが、福島事故全体の構図です。

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