第310回「民主党を政策的『死に体』にしたマスメディア」

 民主党から小沢グループの離脱が避けられなくなっています。過半数を割っている参院に続いて、衆院でも不安定な国会運営になるとみられます。2009年の政権交代からダムの建設中止など騒ぎは色々とありましたが、民主党が実現した変革らしい変革を数えられません。政権交代の果実が公約になかった消費税増税だけに終わる、恐ろしい結末に導くのは増税の大合唱をした既成マスメディアです。来年に予想される衆参同日選まで、『死に体』民主党政権には自公両党との社会保障協議以外に、自前のエンジンで政策を実現する力は残っていないでしょう。

 衆院を押さえていた民主党を大きく分裂させ、内閣不信任案が可決されかねないところまでボロボロにするのなら、増税よりも後世に残すべき政策はあったはずです。「難問先送りは『日本化』…やゆされ野田首相決意」(読売新聞)では野田首相が「英誌エコノミストが財政赤字削減などの難問を先送りする欧米諸国の政治状況を『日本化』とやゆする記事を掲載したことが、社会保障・税一体改革に取り組む決意を新たにした契機となったことを明らかにした」となっていて、理念に基づいた政策の選択ではなかったことをうかがわせます。

 この野田首相を後押したのが在京マスメディアでした。「赤旗」の「消費税増税 あおりにあおった末に… 巨大メディア この異常ぶり いまごろ「公約違反」批判 !?」は《全国紙をはじめとした巨大メディアは》消費税増税を後押しする社説を書き続け《法案採決までの1カ月間、連日のように法案採決をあおってきました。とくに「朝日」はこの期間に14本、「読売」も16本の社説を掲げる突出ぶりです》と指摘します。これに「毎日7本」「日経7本」が加わります。

 「2大政党時代を終わらせる首相に議員統制は無理」で、日経新聞が自らの世論調査を恣意的に扱い、有権者多数が明確に増税に反対している点は後回しにして、小沢グループの造反に焦点を当てた報道ぶりを問題にしました。こうしたご都合主義は各社とも同じでした。朝日新聞28日社説は《マニフェストについて民主党が非難されるべきなのは「約束を果たさなかったから」ではない。「果たせない約束をしたから」である》と増税は擁護して、実現不能な政策をマニフェストに持ち込んだ小沢氏を非難しました。

 マニフェストを信じた有権者の立場がない理屈の展開ぶりです。しかし、第308回「政党支持率4割連合が決める政治に正統性無し」の政党支持率推移グラフが、有権者の過半は増税合意をまとめた民自公3党から離れたと示しています。マスメディアの援護も無力だったのです。自民党は半ば与党に戻った錯覚に陥っており、分裂の民主党は漂流の度を増しそうです。政権交代への失望に輪を掛ける決定的な政治不信に手を貸したマスメディアに責任の自覚があるのか、素知らぬ顔で批判者の役回りだけ演じてはいられなくなりました。

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