第312回「なでしこサッカーが米国と『両雄相並んだ』日」 (2012/08/12)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 五輪女子サッカー決勝の光景は今まで見たことがない、強者同士がぶつかり合う美しさでした。《米メディアがなでしこらを称賛「聖地で美しいサッカーが行われた記念すべき夜」》(soccer-king.jp)が「『ESPN』は世界女王決定戦について、『ウェンブリースタジアムには、オリンピックの女子サッカー史上最多となる80,203人の大観衆が詰めかけた。日本とアメリカはどちらも攻守の切り替えが素早く、一瞬たりとも目が離せないサッカーを繰り広げ、改めて両チームがトップレベルのチームであることを証明してみせた』と報道」と伝えました。

 1年前の第270回「女子サッカーW杯優勝:敵を知る米国も防げず」で描いた神懸かりでなく、五輪ブラジル戦・フランス戦での堪え忍んで勝つサッカーでもない、最強米国と互角にした秘密を、キャプテン宮間選手の半年前のインタビューから覗けます。《宮間あやサマを「ネ申」だと思う理由》(Sam-Home Sam-Camp WEBマスターのお気に入り!)が収録しています。

 質問「アメリカの選手たちはフィジカルが強くコンタクトプレーでは日本はどうしても不利になる。ロンドン五輪ではアメリカとの再戦も予想されます。再び勝利を収めるためには、何が必要だと思いますか?」に対し宮間選手はこう答えます。「日本とアメリカとの間にあるのは『差』ではなく『違い』だという発想が大事になるでしょう。たとえばフィジカルを差ととらえてしまうと、アメリカのようにフィジカルの強いチームを目指さなければならない。これは私の持論ですが、フィジカルの強さは『決定的な勝利の要因にはならない』けれども、フィジカルの弱さが『負ける要因にはなる』ので、ある程度、フィジカルのトレーニングは必要です。だけど、それによって(差を埋めることで)勝つのではなく、『違う』点で勝負をすることが大事だと思っています」

 W杯での奇跡的勝利が、米国選手には「悪夢」であり雪辱に燃えていたことを《リベンジにかけるアメリカ選手の心境》(MikSの浅横日記)が『ワシントン・ポスト』紙からまとめています。

 ワンバック選手は「あんなつらい敗北の後の数日間は、朝、目が覚めると、『あれは現実だったのか?』と自分に向かって考えるようになるものです」と語っているそうです。「確かに、本当に起こったのだ、そしてあの試合の細部が――色々なことがあったこのオリンピックのトーナメントの最中でも――アメリカ選手に付きまとっていたのだ。ワンバックは当初、あの試合の悪夢を何度も見たことを初めて打ち明けた。あのきわどかった準決勝のカナダ戦の勝利の直後、MFのカーリ・ロイド(Carli Lloyd)は、まぢかに迫る決戦を念頭に『復讐(revenge)』や『つぐない(redemption)』という言葉を使った」

 この米国相手の決勝は、フランス戦等を考えると非常に厳しい試練になるはずだったのに、《澤「チャンスがあれば、やれるところまでやりたい」=帰国後、監督&選手コメント》(スポーツナビ)で澤選手が胸を張って語っています。「(決勝での失点は)早い時間帯での失点だったので、そこは課題として残りましたけど、なでしことしてやれることはできていたので、そこは成長として感じていました。五輪の中では一番いい試合ができたんじゃないかと思います」

 佐々木監督には、今回のハイレベル日米決戦の彼方が見えています。「(ここ数年で各国の女子サッカーが進化したことについて)デンマークとかノルウェーとか、僕が監督に就任する前は、前に蹴ってフィジカルで勝負するスタイルでベスト4に勝ち上がっていた。それが北京(五輪)での、われわれのゲームがセンセーショナルだったと思います」「ああいうフィジカル(能力)の高い選手たちが、本当にスキルを重んじるようになったら、今度はなでしことしては、身体能力のある選手が加わる中で、スキルを重んじながら、なでしこらしいサッカーを構築していくという、向こうが上がれば、こっちも上がるという環境の中で、女子サッカーもスペクタクルな男子のようなサッカーになっていくというのは間違いないと思います」

 【参照】インターネットで読み解く!《文化・スポーツ》

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