第336回「中国で突出の微小粒子汚染は環境汚染無視のツケ」

 中国内陸部広域で発生が伝えられる微小粒子状物質汚染は大気環境基準の10倍もの濃度に達し、深刻な健康被害が懸念されています。環境汚染を無視した経済発展と法制度を続けたツケが一気に噴出した形です。「PM2.5」と呼ばれ、粒径が2.5マイクロメートル以下の汚染物質測定を、これまで中国当局は実施していませんでした。PM10というもっと大きな粒径物質の測定しかしなかったのに、北京と上海で米国大使館、領事館が在留民向けに測定結果を独自に公表、迷惑顔だった中国当局が渋々測り始めたら、とんでもない高濃度広域汚染状況が明るみに出たのです。

 時事通信の《各地で有害物質含む濃霧=呼吸器疾患急増、交通まひ―中国》は《北京など33都市で12日、6段階の大気汚染指数で最悪の「深刻な汚染」を記録し、13日も続いている。呼吸器系疾患の患者が急増し、高速道路の通行止めや航空便の欠航が相次ぐなど、市民生活にも大きな影響が出ている》《大気汚染の主な原因は、車の排ガスや工場の煙などから出る直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質「PM2.5」。北京では12日、この物質の観測値が1立方メートル当たり75マイクログラム以下としている基準を市内全域で超え、半数の観測点で基準の10倍近くまで上昇。900マイクログラムを突破したところもあった》と報じています。  日本の大気環境基準は「1年平均値が15マイクログラム/立方メートル以下であり、かつ、1日平均値が35マイクログラム/立方メートル以下」です。上の図(環境省資料から引用)にあるように微小粒子は肺の奥の奥、肺胞まで入り込みます。そこから呼吸器系ばかりでなく循環器系や免疫系にも影響を及ぼします。環境省の「微小粒子状物質健康影響評価検討会報告について」は「PM2.5ないしPM10への短期曝露と死亡に関するいくつかの複数都市研究において、日単位の曝露(場合によっては数日遅れで)と死亡との間に関連性がみられている」「PM2.5への長期曝露と死亡に関するいくつかのコホート研究において、PM2.5と全死亡、呼吸器・循環器死亡、肺がん死亡との間に関連性がみられている」としています。

 天津に居住している方のブログ「汚染」はこう不安を訴えます。「昼間で雲もないのに、空が夕陽のように黄色くて、太陽がスモッグの奥にかすかに見えるだけ。アメリカ大使館発表の数値を見たら、なんと12日の夜の時点で北京のPM2.5は852μg/立方メートルだそうです」「かなり控えめな中国環境保護部の数値を見ても、12日の天津は424の“重汚染”。過去1ヶ月の中でもダントツの数値です。え? どうなるの? みんな死ぬの?」

 水俣病などが契機になって公害対策基本法が国会で可決されたのが1967年でした。中国の状況はこれよりも前、水俣病患者が奇病として差別されていた段階に相当します。公害被害者が補償を求める権利を認められるどころか、泣き寝入りするしかない法制度になっています。地方から北京に出向いて、政府に直訴するケースも出ていますが、社会を乱す者として司法手続きによらない労働矯正送りになる可能性が高いようです。

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