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第352回「福島原発事故にまだ残る重大な失敗と教訓」 (2013/04/02)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 河北新報が伝えた福島原発事故の新発見・注水失敗はまだ重要な教訓が残っていると見せつけました。原子力規制委が「継続的な事故分析」を掲げて福島第一の現地調査を開始する今、改めて事故全容解明が必要です。河北新報の《福島第1原発 1号機注水9割漏出か 現場、水圧で認識》は炉心溶融や水素爆発が起きた後の2011年3月20〜22日に原子炉への海水注入が足りなかったとの報道です。この結果、放射能の雲が発生して千葉県東葛地域など首都圏と東北南部にホットスポットを作ったと見られます。

 この失敗が分かったのは東電の社内テレビ会議の録画映像公開からです。東電は海水を吸い上げた段階の量で注水量を公表してきたのに、当時の吉田所長が原子炉への途中では水圧が10分の1に落ちていると発言しました。《東北大流体科学研究所の円山重直教授(熱工学)は、原子炉の温度や圧力のデータから「1号機は20日から22日、3号機は21日から23日ごろにかけて水がほとんど入らず、空だき状態だった。入った水もすぐに蒸発した」と分析。「格納容器の破損した部分から蒸気とともに放射性物質が大量に出ていた」と指摘する》

 こうして放出された放射能の雲は3月20日には東北南部へ、21日には風向きが変わって千葉県柏市など東葛地域から東京に向かい、雨で地表に落ちて各地でホットスポットになって行きました。後日、問題化した点から言えば非常に多くの首都圏人口に影響を及ぼした、大きな注水失敗です。

 政府・国会などの事故調報告は、1〜4号機が炉心溶融や水素爆発を起こした11〜15日までに焦点が合っており、20日以降の東電の不始末は見逃されてきたと言えます。タービン建屋の消火設備ラインを通じて原子炉建屋に水を流していた途中の漏水です。もっとも考えやすいのは耐震設計の重要度ランクが低くて大震災の振動で傷み、漏れが生じた可能性です。普段は重要でなくても、この事故のような緊急時には「命綱」にも変わり得る配管の耐震性設計をどうすべきか、重要な教訓になります。

 原子力規制委はこの3月27日に会合を開いて「東京電力福島第一原子力発電所における事故分析に係る検討会」について議論しています。各種の事故調報告で「基本的なところにつきましては、ある程度共通的な整理というものがあるわけでございますが、一方で現地をなかなか見ることができない等々の理由によりまして、技術的な論点もかなり残されているという状況」「廃炉のプロセスというものが進められているということになるわけでございますが、こういった原子炉等の設備機器というものがいろいろな影響を受けてございますので、今後の安全確保という観点からも現状をしっかり把握していくということが非常に重要な課題と認識」のようです。

 原発の新安全基準が策定中なのに福島原発事故から直接、学ぶのではなく、これでもかと多層防護増設を重ねる構成なのは、第342回「大風呂敷に信頼が託しかねる原発新安全基準」で指摘しました。本来の順序と逆転していますが、精力的に現地調査をして、現場で本当に問題になった事実に立脚して、安全設備を構成しなおすべきだと考えます。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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