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第354回「原発新安全基準の是非は個別審査の厳格さ次第」 (2013/04/11)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 原子力規制委が意見公募にかけた原発の新安全基準は多層防護がうたわれているものの、個別原発でどれほど厳格な審査が実施されるかに大きく依存と読み取れます。現状と大差ない状態での再稼働まで実はあり得ます。福島原発事故の反省に立っているとは言え、津波で一気に機能を失った非常用ディーゼル発電機を分散配置や可搬式に変えれば、後は5年後に猶予して新設される「特定安全施設」の機能に頼るシナリオもあり得るからです。マスメディア報道は「電力会社がコスト増加から改修を諦めて廃炉も続出か」と伝えていますが、原子力規制委のさじ加減で実態は変わりうると見ます。なお、従来の「安全基準」ではなく「規制基準」と呼ぶようです。

 意見公募(パブリックコメント)は「原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に対する意見募集ついて」で実施されています。法令の書き換えという形式で非常に読みづらいのですが、重大事故に焦点を絞って読んでみました。「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等に基づく原子力規制委員会の処分に係る審査基準等」が該当文書です。

 福島原発事故の特徴は1〜3号機の原子炉の底が抜けたばかりか、格納容器までも高温になった損傷で穴が開き、放射能封じ込め機能を失った点にあります。その結果、原子炉建屋にまで燃料体溶融で発生した水素ガスが漏れ出し、大きなガス爆発を生じました。格納容器の破損防止に注目すると、「(重大事故等による損傷の防止)第三十六条」は「発電用原子炉施設は、重大事故が発生した場合において、格納容器破損及び放射性物質が異常な水準で工場又は事業所の外へ放出されることを防止するために必要な措置を講じたものでなければならない」とします。原子力規制委員会が指定する格納容器破損モードがいくつも挙げられていて、最後が「溶融炉心・コンクリート相互作用」です。

 炉心溶融で原子炉の底が抜けた前提なので「格納容器の床上に落下した溶融炉心が床面を拡がり格納容器バウンダリと直接接触しないこと及び溶融炉心が適切に冷却されること」「溶融炉心による侵食によって、格納容器の構造部材の支持機能が喪失しないこと及び溶融炉心が適切に冷却されること」が指示されています。床のコンクリートは溶かしても、格納容器そのものの鋼板や構造材に影響させないように冷却せよというのです。

 新基準は従来設備に屋上屋を架す形で安全設備を加えます。典型的なのが5年間は建設が猶予された「特定安全施設」で、本体から百メートル離し「原子炉建屋への故意の大型航空機の衝突その他のテロリズムに対して重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれない」とされています。ここにも「格納容器破損を防止するために必要な設備を設ける」が指示され、「格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却機能(例えば、格納容器下部への注水設備)」が存在することになっています。「格納容器破損防止対策が有効に機能しなかった場合は、制御室から移動し緊急時制御室で対処することを想定」しているので、本体の機能が駄目ならここで防ぐ仕組みです。

 原発の配管は複雑怪奇です。福島原発事故でも外部からの原子炉への注水や格納容器からの排気のルートが四苦八苦しながらも作られました。実態は、東電が全配管状況を図面として把握していなかった杜撰があっただけで、きちんと設計図と工事の記録が管理されていれば、あれほど苦労することはなかったはずです。冷静になって考えれば新たな冷却ルートを既存の配管の組み合わせで作ることも可能なはずです。全く新しい冷却用配管を作れと指示されて、既存の複雑な配管や炉の機能と干渉しないように穴を開けて作る方が難しいかもしれません。出来上がった新しい安全審査の結果が額面通り新たな多層防護なのかは全く分かりません。

 第342回「大風呂敷に信頼が託しかねる原発新安全基準」で大枠について考えましたが、個別の原発審査の実情がどこまで厳格なのか、細部はこれからますます見えにくくなります。形式的にパブリックコメントをと言われても虚しい感じがします。実施段階で看板と中身に差がないと保証してくれる役割を、まさかマスメディアが果たしてくれると考える人はいないでしょう。そしてまた、福島原発事故では人間系が初動からミスを犯し続けた問題が新基準には見えていません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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