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第355回「大気汚染による中国とインドの健康被害深刻」 (2013/04/14)

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(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 4月上旬に大気汚染が深刻な中国で2010年の死因の約15%は微粒子PM2.5によるとの報道がありました。元になる研究結果が最近、国別に公表され、インドがまさに中国の状態に突き進みつつあると判明しました。微粒子大気汚染と言えば年始めの北京の重篤スモッグが連想されますが、家事で使う固形燃料などから出る煙も仲間であり、重大深刻な汚染源です。大気汚染の何割かは家庭空気汚染が漏れ出たと考えられています。各国が参加した世界疾病負荷研究(Global Disease Burden GBD2010)の国別プロフィールから、中国とインドで健康に影響している主要リスクファクターのグラフを以下に抜き出しました。


 赤字で表示した「大気微粒子汚染」と「家庭空気汚染」は微粒子汚染として扱われています。報道にあった《中国の死因14.9%死亡者123万4000人》も両者を合わせた数字のようです。この合計で中国でリスク寄与12%もある第2位の高血圧を軽く上回ってしまいます。中国の環境NGO主任、馬軍氏が毎日新聞のインタビューで、北京に「地方から来る人たちが住む都市郊外には集団暖房設備がないため、石炭ストーブで暖を取る人もまだ多いのです。他の都市も事情は似ています。農村部でも、暖房や料理のためにトウモロコシや麦の茎を燃やすことが珍しくありませんが、この黒煙も大気汚染の一因です。社会の発展と遅れた部分の両方の原因による汚染が複合して起きているのです」と答えています。GBD2010のプロフィールは「5歳未満児の主なリスクは家庭空気汚染」とします。

 インドで目立つのが家庭空気汚染の寄与率が6%を超えて第2位である点です。率そのものは中国よりやや低く、第210回「2026年インド人口世界一:牛糞が家庭燃料の国」にあるように世帯の半分以上は燃料に乾燥牛糞・薪使用世帯なので火力が弱く、石炭を使う中国より少しマイルドなのでしょうか。近年の工業化進行で大気微粒子汚染が7位に入っていて、首都があるデリー地域などは世界最悪のひとつとの報道もあります。

 サンケイビズの「インドの大気汚染問題が深刻化 10年の死者67万人超」は米国のNPO健康影響研究所による数字を見出しに取り上げています。しかし、同じ記事の中で《政府機関のインド医療研究評議会幹部は、11年の政府調査で67%の家庭が固形燃料を使用していると指摘。「屋内の空気汚染による死者数も年100万人を超えている恐れがある」と警告を発した》と伝え、上のグラフからはこの数字が妥当に見えます。

 中国やインドより貧しいバングラディシュになると、リスクファクターのトップは喫煙、ついで家庭空気汚染で寄与率5%程度となり、大気微粒子汚染は見当たりません。日本の場合ならば大気微粒子汚染は8番目で寄与率3%ほど、もちろん家庭空気汚染はランク外です。


 世界気象機関(WMO)が3月にスイスで開いたシンポジウム「WMO’s Global Atmosphere Watch Symposium〜Air Quality & Health」は、2010年には大気微粒子汚染で330万人の死者、家庭空気汚染で270万人の死者と指摘します。2005年段階でPM2.5濃度をインド、中国、北米、西欧の都市・地方で評価した上のグラフが注目です。2008北京五輪より前の時期ながら、インドの都市部は中国に近づいていますし、中国の地方部でも欧米の都市部を超える濃度になりつつあります。今年初めの深刻な事態は積み上げられた結果であり、たまたま起きた事態ではありません。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー
     「インド」関連エントリー

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