結婚離れは非正規雇用増の結論避ける厚生労働白書 [BM時評]

 思案投げ首でいいのか厚生労働白書、と言いたくなります。若者が結婚しなくなっている現状を各種調査でくどくど分析するのですが、非正規雇用が拡大し結婚の壁、年収300万円を越せない点を明確に言わないのです。いかに安倍政権が雇用流動化を指向していようと、結論が出ている傾向ははっきりさせねばなりません。さらに、この現状でも若者に結婚してもらい、人口減少に歯止めを掛けたいのなら、子ども手当などの支給を飛躍的に増やして子育て費用の心配を解消する施策を打ち出すしか策は無いのです。今年の白書からグラフを2点引用します。  若い世代が年収300万円以下では既婚率が10%もない点と、15〜34歳男性で正規雇用と非正規雇用の有配偶率の比が4倍にもなる格差が読み取れます。引用は《平成25年版厚生労働白書 −若者の意識を探る−》からです。このグラフにはありませんが、賃金構造基本統計調査2012年版を見ると、非正規雇用男性の平均年収は20代後半で197万円、30代前半で216万円になっています。結婚観や恋愛論など副次的な要因はあるでしょうが、大きな傾向は年収不足から発しています。

 ドイツも日本のように出生率低下に悩んでいます。『涙ぐましい努力をしても報われることのないドイツ〜託児所、育児金、子供手当て・・・でも出生率は上がらない』を読んで、日本よりも子育て支援が遥かに手厚いのに驚きました。例えば月額2万4000円の子ども手当が「0歳から19歳未満のすべての子供に適用される。しかも、子供が18歳以上になっても独立せず、大学へ行ったり、職業訓練中であったり、インターンや社会福祉ボランティアに従事していたりする場合は、25歳まで延長される」といった具合です。託児所不足も法律を作って本格的に手が付けられました。

 しかし、この程度の手厚さでは足りないのです。日本の現状など論外です。第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」で出生率を人口維持水準まで回復させているフランスやスウェーデンなど欧州諸国との違いを取り上げています。家族関係社会支出の現金支給・現物支給が対GDP比で、日本は3分の1しかありません。

 第378回「日本に続き中国も超特急で超高齢社会へ突入予定」で65歳以上の老年人口の15〜64歳の生産年齢人口に対する割合が4割を越し、5割も間近いと示しました。非婚化と少子化の勢いを止める必要があるならば手を打たねばなりません。ところが、今回の厚生労働白書のように無為無策で政府は時を過ごしてきました。