第388回「PM2.5発がん性認定、お座なりの日中政府に痛撃」

 PM2.5など微粒子大気汚染に発がん性を認定したWHOの認定は、汚染源退治に成果がない中国政府のみならず、中国から越境汚染が深刻になっているのに対処しようとしない日本政府にも痛烈な警告になりました。冬場の石炭暖房が有力汚染源とされていたのに、この夏も重篤スモッグが頻発、国慶節の大連休で工場が休んでいた今月初旬にもスモッグ続きと発生源の常識が覆っています。冬に向かって心配が増すばかりです。こうした中、17日に大気汚染赤色警報発令の場合、自動車のナンバープレート末尾の偶数・奇数によって運行停止、つまりクルマの半分を動かさない強制措置が発表されました。2008年の北京五輪を乗り切った奥の手ですが、5年間の経済発展・人口集積の大きさは膨大で運行停止の有効度は下がっているでしょう。  中国全土をカバーしている「全国都市大気実況」で今日18日午後3時の北京付近を拡大しました。北京の重度汚染マークは内陸の河北省、沿岸部の山東省にも広がっています。これより南部は比較的汚染は軽く、上海近くになると良好な空気でした。こうした南北の汚染落差はウオッチを続けていると頻繁に見られます。7月初めに米ニューヨーク・タイムズなどが伝えた「中国北部の汚染は南部に比べて深刻で、住民の平均寿命が5年半短縮する恐れがある」とした調査結果について、中国当局は「根拠に乏しい」と否定しました。もし認めたら国民への影響が計り知れないと考えたのでしょうが、発がん性を考えても疑わしさは拭えなくなりました。  7月の第373回「中国大気汚染が高濃度で関東から西日本を覆う」で紹介した「PM2.5まとめ」による越境汚染の広がりを示すマップです。赤い点では国内の環境基準大気1立方メートル当たり35マイクログラムを超えています。この7月25日は185地点でしたが、400地点に迫る日がありました。環境省は2月に、早朝に85マイクログラムを超える日は健康に影響する1日平均で70マイクログラムを超える恐れとの暫定指針をまとめました。ところが、このシナリオ通りにならず、住民に警告を出せずに70マイクログラムを超えた日が発生しています。また、2倍を基準に取るのがおかしく、呼吸器が弱い人には環境基準レベルで注意を喚起するべきだと考えます。

 梅雨から夏の時期に中国で重篤大気汚染が続発し、その汚染大気が日本海で滞留してしまう予想外の事態が続きました。第374回「対岸の火事でないPM2.5、抜本的な浄化支援が必要」で伝えた通りで、中国の主要汚染源が世界に例を見ない膨大な石炭使用にある点は間違いありません。石炭からの汚染物質除去では並外れた環境技術を持つ日本に、最近の歪んだ日中関係から頼れなくなっている中国は哀れです。まさに「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」です。