原発事故時の避難計画、具体化するほど無理目立つ [BM時評]

 原発再稼働の前提であるはずの事故時避難計画は、対象が30キロ圏内135市町村に大幅拡大した結果、具体化するほど無理がある様相です。策定は4割もなく、大人口の長距離避難など実現可能か検証が必要です。25日に原子力規制委に出された内閣府調査から、原発集中地である福井周辺の自治体避難先地図を引用します。  30キロ圏に全市すっぽり入ってしまう人口6万8千人の敦賀市が、隣の滋賀県や京都府を通り越して奈良県まで避難先を求めているのが目を引きます。他の自治体も大阪府や兵庫県、さらに遠く徳島県や和歌山県までも入っています。動員できるバスなど車両数の限界がある上に、重大事故発生が知らされれば道路は大混乱に陥りますから、こんな広域避難が本当に可能なのか、十分に検証しないと「絵に描いた餅」になります。

 朝日新聞の《原発避難計画、策定4割に満たず 立地30キロ圏自治体》はこう伝えました。《再稼働を目指し、電力会社が新規制基準の適合審査を規制委に申請した原発を抱える7地域のうち、避難計画がすべての自治体でそろっているのは、伊方、玄海の2地域のみだった。柏崎刈羽原発周辺では、9市町村の全てが防災計画はあるが、避難計画はまだ作られていない。福井の原発密集地域、泊、島根、川内の各原発の周辺では、ほぼ全ての市町村で年内にも、避難人口の把握や避難方法、経路の決定など基本的な作業が終わる見通し》その基本作業が上図ですから、道遠しです。

 柏崎刈羽の長岡市や島根の松江市のように人口20万人以上を避難させねばならない自治体は、避難が近距離であっても大変な難事業に直面しています。第386回「前のめる原発再稼働:新規制基準なら万全と錯覚」で指摘しているように、従来の形式的な避難訓練ではなく、大規模避難が実現できると示せる規模の訓練をしなければならないでしょう。そして、福島原発事故では避難準備区域とされる30キロ圏にも震災の翌日には高レベル放射能の雲が流れ出しました。時間の余裕はありません。

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