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必死でないベストは役に立たぬ:韓国船と福島原発 [BM時評] (2014/04/20)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 韓国船セウォル号沈没事故の惨状はどこかで見た光景です。大震災の夜、全電源喪失の福島原発に電源車が向かうと一切放置になりました。救助艇は沈没1時間も前に着いたのに乗客がデッキに並ばぬ異様さを疑いません。真っ先に船を離れた船長は論外として、救助当事者も必死でベストを尽くそうとしていないのは、報道された写真からも明らかです。穏やかな天候の昼間、300人が犠牲になる事故現場とはとても思えません。


 船長が離船した際とされる写真です。この高いアングルで撮影されている以上、ボートのような小舟ではなく、責任者がいる救助艇です。これだけ旅客船が傾いていて避難客がなく救命ボートも浮きも使われていない不自然さに、海事関係者なら気づかないはずがありません。海上保安部の取材経験がある私には信じられません。客は救命胴衣着用の上でデッキに出て待機が常識なのに、船内ではこの時、「動かずに救助を待つように」と放送が続いていたのです。

 謎解きは朝鮮日報の《旅客船沈没:大統領の叱責恐れもたつく官僚》にありました。《政府や与党の関係者は「今回のセウォル号沈没事故で、専門性を備えた公務員が現場で積極的に動けずにいるのは『過ちを犯せば自分が全ての責任を負わされる』と恐れているためだ」と語った。現場を訪れた与党セヌリ党の関係者は「公務員は『自分ばかりが出て行って過ちを犯せば、責任を負わされる』と考えているため消極的だ。事態が終息したら誰も責任を取らない、ということを経験的に知っている」と語った》

 「3.11」では電源車が駆け付けたものの、接続すべき電源盤が建屋の地下にあって大津波で水没していました。第347回「無傷で終わる可能性が十分あった福島原発事故」で書いた通り、当時の原子力安全委、班目春樹委員長には電源盤の位置に危惧があったのに図面で確認しませんでした。《図面と見比べて電源盤が接続不能と早く判断できれば、重量級の電源車派遣は無意味です。切れている直流電源を補うためにクルマで使うバッテリーを10個か20個、かき集めて届けるのが最も有効な早道であり、1号機でほとんど働かなかった最後の命綱装置「非常用復水器」のバルブ操作を可能にして動かせたでしょう》

 韓国メディアは「先進国の仲間入りをしたと思ったのに三流国だった」と悲憤慷慨しています。シーマンシップ、職業倫理の欠如は隠すべくもありません。福島原発事故の際はどうだったでしょうか。政府の原子力安全・保安院も東電本店も職業倫理にもとることなく必死でベストを尽くしたでしょうか。非常用復水器を誰も実際に使った経験が無かった原発の現場も含めて、韓国船事故はわらえません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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