第443回「ねじ曲げられる原発事故の反省、法外な安全対策」
福島原発事故の反省が風化していませんか――住民避難の指針だったSPEEDIが予算削減で格下げされることになりました。安全対策費用は原発資産総額を上回ってしまい、それでも原価算入して電気料金から徴収できると平気な顔です。時事通信世論調査では8月には「6割が原発再稼働反対」、5月には「脱原発志向、84%」と出ています。有権者の意識がはっきり読み取れるのに安倍政権は無視して再稼働に走るばかり。根本のところで政府と有権者には齟齬があり、その結果として福島事故反省のねじ曲げがまかり通るように見えます。
朝日新聞の《SPEEDI、予算大幅減へ 放射線量の予測に限界》はこう伝えています。《福島第一原発事故で初期の住民避難に活用されず問題になった「SPEEDI(スピーディ)」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)について、原子力規制委員会は来年度予算を半額以下に大幅減額する方針を固めた。放射性物質の広がりを即座に予測するには技術的な限界があるため、代わりに放射線量を実測するシステムを強化する。これまでSPEEDIを前提にしてきた自治体の避難計画は見直しを迫られることになる》
《大量の放射性物質が放出されるおそれが生じた時点で、5キロ圏は放出の有無にかかわらず即避難。5〜30キロ圏は屋内退避を原則とし、実測値をもとに避難の必要性とタイミングを地域ごとに判断》と言われて納得するようでは福島原発事故をあまりに知らないと言えます。屋内退避になった南相馬市などは物資の流入が絶えて、住民は飢餓状態にすらなりました。多いところで30キロ圏に数十万人規模の避難対象住民を抱えます。食料供給など無理です。また、実測線量値が危ういレベルまで上がったら大混乱は必至です。
西日本新聞の労作《原発安全対策に2・2兆円 40年運転では回収困難 電力9社アンケート》は、現在進められている新規制基準をクリアする安全対策の怪しさ・愚かしさを浮かび上がらせました。《電力9社が原発(47基)に投じる安全対策の総額が約2・2兆円に膨らみ》《原発の資産価値は9社総額で約2兆800億円。安全投資額も施設が完成した後に上乗せされ、資産価値は倍増する計算だ》。総括原価方式ならではです。運転年数の原則40年を稼働しても回収不可能が想定されるケースが発生、その場合は廃炉になっても引き続き電気料金から徴収して減価償却をします。
例えば九電なら2100億円の原資産に3000億円超の安全対策を追加するのです。加圧水型の九電の場合は原子力規制委の審査をほぼパスしたので見通しは立っています。ところが、危険性が一段高いために審査が後回しになっている沸騰水型の東電などは手前味噌の安全対策が了承されるとは考えにくいのです。中部電の浜岡原発は1711億円に3000億円、中国電の島根原発は751億円に2000億円と資産に倍する安全投資です。安全性の面からも消費者負担増を避けるためにも、稼働を諦める決断をするべきです。
2兆円と言えば、福島原発事故直後に東電の株価が暴落、ほぼ2兆7千億円の企業価値が失われた騒ぎを《最悪レベル7より日経の原発『見切り』記事》に記しました。大事故を起こせばこれだけの騒ぎになる原発はたまらない、経営の視点からも見切るしか無いという覚めた視点が3年半後の今は失われています。東電の事故責任と経営責任をウヤムヤにしたために、各電力は安直な原発延命策にすがりついています。
【参照】第381回「福島原発事故、国家として原因不詳でよいのか」
朝日新聞の《SPEEDI、予算大幅減へ 放射線量の予測に限界》はこう伝えています。《福島第一原発事故で初期の住民避難に活用されず問題になった「SPEEDI(スピーディ)」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)について、原子力規制委員会は来年度予算を半額以下に大幅減額する方針を固めた。放射性物質の広がりを即座に予測するには技術的な限界があるため、代わりに放射線量を実測するシステムを強化する。これまでSPEEDIを前提にしてきた自治体の避難計画は見直しを迫られることになる》
《大量の放射性物質が放出されるおそれが生じた時点で、5キロ圏は放出の有無にかかわらず即避難。5〜30キロ圏は屋内退避を原則とし、実測値をもとに避難の必要性とタイミングを地域ごとに判断》と言われて納得するようでは福島原発事故をあまりに知らないと言えます。屋内退避になった南相馬市などは物資の流入が絶えて、住民は飢餓状態にすらなりました。多いところで30キロ圏に数十万人規模の避難対象住民を抱えます。食料供給など無理です。また、実測線量値が危ういレベルまで上がったら大混乱は必至です。
西日本新聞の労作《原発安全対策に2・2兆円 40年運転では回収困難 電力9社アンケート》は、現在進められている新規制基準をクリアする安全対策の怪しさ・愚かしさを浮かび上がらせました。《電力9社が原発(47基)に投じる安全対策の総額が約2・2兆円に膨らみ》《原発の資産価値は9社総額で約2兆800億円。安全投資額も施設が完成した後に上乗せされ、資産価値は倍増する計算だ》。総括原価方式ならではです。運転年数の原則40年を稼働しても回収不可能が想定されるケースが発生、その場合は廃炉になっても引き続き電気料金から徴収して減価償却をします。
例えば九電なら2100億円の原資産に3000億円超の安全対策を追加するのです。加圧水型の九電の場合は原子力規制委の審査をほぼパスしたので見通しは立っています。ところが、危険性が一段高いために審査が後回しになっている沸騰水型の東電などは手前味噌の安全対策が了承されるとは考えにくいのです。中部電の浜岡原発は1711億円に3000億円、中国電の島根原発は751億円に2000億円と資産に倍する安全投資です。安全性の面からも消費者負担増を避けるためにも、稼働を諦める決断をするべきです。
2兆円と言えば、福島原発事故直後に東電の株価が暴落、ほぼ2兆7千億円の企業価値が失われた騒ぎを《最悪レベル7より日経の原発『見切り』記事》に記しました。大事故を起こせばこれだけの騒ぎになる原発はたまらない、経営の視点からも見切るしか無いという覚めた視点が3年半後の今は失われています。東電の事故責任と経営責任をウヤムヤにしたために、各電力は安直な原発延命策にすがりついています。
【参照】第381回「福島原発事故、国家として原因不詳でよいのか」