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第444回「安倍政権は科学技術立国を破壊:企業特許に大学」 (2014/09/03)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 朝日新聞が社員が発明した特許を無条件で企業のものとする政府の方針転換を報じました。安倍政権の発足以来、国立大の研究を崩壊させる施策が加速、企業の研究でも意欲を奪うので科学技術立国の基盤が失われます。順調に国力が伸びていた時代とは違い、大学にも企業にも余力がありません。この状況で勝算もなく既存のバランスを大きく崩す政府のやり方は自殺行為ですが、何かを変えた実績を誇る政策セールスマンばかりになった中央省庁官僚には痛くも痒くもありません。10年後にどうなっていても、誰も責任を取らないで済むからです。

 《特許、無条件で会社のもの 社員の発明巡り政府方針転換》は《政府は、社員が仕事で発明した特許を「社員のもの」とする特許法の規定を改め、無条件で「会社のもの」とする方針を固めた。これまでは、十分な報償金を社員に支払うことを条件にする方向だったが、経済界の強い要望を踏まえ、こうした条件もなくす。企業に有利な制度に改まることになり、研究職の社員や労働団体は反発しそうだ》としています。特許庁は来年の通常国会に特許法改正案を提出する構えです。

 2005年の『青色LED和解で理系冷遇は変わるか』で紹介したように、中村修二氏の青色発光ダイオード訴訟が和解した結果、文系に比べ冷遇されてきた企業研究者に特許について得られる報酬の相場感が出来てきたところでした。中村氏が国際学会などの場で欧米研究者に社内待遇を話すと「お前は奴隷か」と驚かれたそうです。その後の経済成長足踏みを見ても、企業が研究者待遇を劇的に改めたとは思えません。特許が無条件で会社のものになれば研究者のインセンティブは大きく減じてしまうでしょう。

 大学については世界のトップグループに伍していける少数精鋭だけ育てて、残りは切り捨ててよいとの判断が見えます。切り捨てる大半から人件費さえ削り取って、上位大学に集中投資すれば効率的だと政府は考えているのです。

 この問題を第435回「2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる」とその続編第437回で検討しました。2004年の国立大学独立法人化を契機にして先進国で日本にだけ特異な論文数の減少が起きている上に、追い打ちを掛ける資金配分の傾斜化志向です。背景には研究評価が十分出来ているとの事実誤認があります。

 ドイツをお手本にして海外研究者を積極的に呼び込むつもりですが、ドイツでは同じ大学での教授の昇任は法律で禁止されています。米国ハーバード大は日本と似ていて同じ大学出身者が教授になるケースが多めながら、一度は外部の研究機関を経験させます。「旧七帝大」を中心にした学閥が堅固に維持され、内部持ち上がりで教授になる日本は、目利きの部分さえも学閥依存になっているのです。疑わしい「目利き」で傾斜配分されて効率的であるはずがありません。資源小国日本が生きる唯一の道、科学技術立国は幻になるでしょう。

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