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第450回「兼業稲作農家の退場迫る。傍観のメディアよ動け」 (2014/10/23)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 3割にもなる米価大幅値下がりが稲作経営を直撃しています。零細な兼業稲作農家は退場するしかない局面なのに、マスメディアは政策に斬り込みません。コメ作りを支える専業農家には保護策があり、傍観する姿勢です。米価と言っても消費者への小売価格ではなく、集荷する農協が農家に払うコメ代金概算金です。店頭価格も下がっているものの「3割も下落」とは聞きませんから中間にいる農協の取り分が肥大していると推測でき、農協も農家の存在を本当には心配していない怪しい事態です。政府は稲作の構造改革を正面から議論する気はなく、農協と波風立てずに流れるままにしておきたいと見えます。これにメディアも同調していては困ります。

 農業協同組合新聞の《米価下落で緊急要望 北海道東北地方知事会》に、政府の「心配はない」とする対応ぶりが出ています。

 《西川農相は、収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)について米価が「1万5000円」基準で交付が考えられていると現在の仕組みを説明。「概算金が8000円、9000円でも米価が1万3500円まで回復したとして、1万5000円との差額の1500円、この9割を補てんする。つまり、1割の150円だけが減るということ。(この)ナラシ対策で対応したい」と話し、また、ナラシ対策に加入していない生産者は26年産に限って国庫で差額の5割を補てんする予算も要望していると指摘したうえで、「現実には概算金が低くても農家の手取りには影響しない。こういう仕組みだからあまり心配されなくていいと思う」と吉村知事の要請に応じた》


 農水省ウェブから引用した収入減少影響緩和対策の仕組み図です。農協の概算金が事実上の米価である実態があっても、いくら下がろうと過去収入との差額を9割まで補填する保険のような仕組みが4ヘクタール以上の専業農家などには出来ています。その過去収入がコメ60キロ1万5000円と算定されており、今年産米に限っては対策に加入していない零細農家にも、今年の収入との差額半分の国費補填を考えるというのです。

 しかし、河北新報の《14年産米 概算金暴落/東北の農家懸念 減反廃止でさらに下落も/農政激変 東北から》に《東北農政局によると、コメ60キロ当たりの生産費調査(12年産、地代などを含む)は平均1万4094円、耕作面積5ヘクタール以上の大規模農家で1万1432円。14年産米の概算金はほとんどの品種がこれを下回った》とあります。

 全国的に概算金が60キロ当たり1万円を超えた品種が数えるほどしか無かったのですから、生産費が高い零細農家は来年からは稲作を続けられません。今年の収支を国の臨時措置でしのげても、来年以降は全く違います。もう先祖の水田を守るためだけの零細稲作は不可能です。一方、大規模農家は収入減少影響緩和対策で取り敢えず営農継続が可能でしょう。

 経済専門紙の日経が両者の差を書き分けないのは不思議です。《米価下落、コメ農家に廃業の危機》はミスリードになる記事です。《日本人の主食であり、ずっと農業と農政の中心にあり続けた「聖なる作物」、コメが重大な転機を迎えた。きっかけをつくったのは農協だ。今年とれたコメに払う代金を大幅に引き下げ、各地の農家に動揺が広がっている。採算割れに直面したコメ農家が稲作をあきらめる可能性が出てきた。「このままでは稲作を続けられなくなる」。千葉県のある大規模農家はこう嘆く。農協の上部組織、全国農業協同組合連合会(全農)が農家に示す「概算金」は千葉産のコシヒカリの場合、60キログラムで9000円。去年より2700円少ない》

 その後も補助金が拡充された飼料米作りへの転換も出口にはならない、今までの政策の延長では駄目と指摘するばかりです。編集委員の署名記事なのに、具体的にどうすればいいのか、提言がありません。

 2007年の『専業農家の救出を急がねば稲作は崩壊』では専業農家にセーフティネットが必要と議論しました。一応のセーフティネットが動く今、零細農家が米価大幅下落で稲作を放棄するこのチャンスに水田を大規模農家に集約するべきです。さらに大規模農家には、欧米のような財政による農家への直接支払いで支援する仕組みに転換すべきなのです。減反など効率が悪い巨額の補助金で成り立っている農政を抜本的に改め、農業の高コスト体質に責任がある農協にも全面的に出直してもらい、専業農家には思う存分に作らせて消費者には安いコメを届けるビジョンを示すのが、この秋のメディアの仕事と考えます。

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