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第454回「日中敵意の連鎖、止むどころか増幅の恐れ大」 (2014/11/16)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 2年半ぶりの日中首脳会談、両首脳の情けないほど悲惨な表情の握手写真ばかりが印象に残りました。友好の輪が拡大するどころか、日中間で敵意の連鎖の方がさらに拡大する今後を暗示していたと理解すべきでしょう。国内メディアは詳しく伝えませんでしたが、朝鮮日報が引用した国営新華社通信の南京大虐殺教育全国拡大報道は深刻なものです。反日映画やドラマが氾濫している現状の上に、小中高校での教育に取り組むというのですから、反日意識の刷り込みは強烈にならざるを得ません。南京大虐殺が存在した事実に違いはありませんが、中国側の並べる虐殺被害数字は非常に大きく設定されており、教育現場で「事実化」されるでしょう。

 中国は今年、「南京大虐殺追悼日」(12月13日)を初めて国の記念日としました。朝鮮日報の《笑顔なき中・日会談直後、中国の学校で「南京大虐殺」授業》はこう伝えました。

 《日本が南京で行った残虐行為を記録した小中高校教科書を作成・配布した。小学校教材の名前は「血火記憶(血と火の記憶)」、中学校教材は「歴史真相(歴史の真相)」、高校教材は「警示思考(警告に対する考え)」だ。小学校では9月から授業に入っており、高校でも年末ごろには始まる予定だ》《中国国営の新華社通信は14日「現在は南京のある江蘇省の中学校でだけ『歴史の真相』を学んでいるが、近く全国の中学校でこの教科書を使用する予定だ。南京防衛戦闘や戦後審判などの歴史を綿密に記録している」と報じた。中学校の教科書だが、日本軍が行った大虐殺・強姦(ごうかん)・放火などを写真と共に紹介しているという。南京外国語中学校のウィ・ウェイ主任は「生徒たちが衝撃を受けないように教科書の文章や写真や慎重に選んだ」と語った》

 「生徒たちが衝撃を受けないように」との表現が含意しているどぎつい内容は容易に想像できます。2012年の第320回「中国政府主導だった反日デモと愛国教育の正体」で暗い将来を予測しました。現在、表面上は反日デモは収まっても、もっと舞台深くで暗転が進むと考えなければなりません。

 朝日新聞が《(インタビュー)政治化するナショナリズム 米シートン・ホール大学准教授、汪錚さん》で今更感があるものの愛国主義教育運動を取り上げました。

 《「1949年以降の毛沢東時代は、階級闘争から中日戦争を語っていました。戦争は日本の資産階級と統治者が起こしたもので日本人民も被害者だ、人民の中国は勝利者だ、と」「ところが執政党(中国共産党)は、天安門事件と東欧の共産主義国家の崩壊で大きな衝撃を受けました。民主化運動は鎮圧したが、人々の信認や支持を失った。社会主義や共産主義も含めて(統治の)合法性に極めて重大な挑戦を受けた。中国社会の核となる『信仰』が真空となり、それを埋めようとトウ小平氏が、歴史の物語を変えたのです」》

 《「人民による階級闘争ではなく、国家と国家、民族と民族の闘争に勝ち抜いたのが共産党である、と。その中核をなすのは、共産党がなければ国は独立できず、再び外国からばかにされ、分裂してしまう、という点です。歴史は勝利者から被害者の物語に変わり、中国の人々と国家が戦争で受けた苦難や血なまぐさい暴力が強調され始めました。そして、この物語に基づいた愛国主義教育運動を始めました。愛国とはいえ、愛党運動です」》

 「中国は、ナショナリズムが両刃の剣であることを知る必要があります。日本が歴史教育を薄めていくことに反対すると同時に、自国の歴史教育も反省すべきです」との主張ながら、現実の方は上に述べた通り残念ながら逆行することになりそうです。言論NPOと中国日報社による日中共同世論調査では、相手国に良くない印象を持っている人は日本側が過去最悪の93%、中国側は86.8%に上っています。時事通信が新華社通信(英語版)から伝えた首脳会談後でのネット利用者20万人対象の対日意識調査も83%が日本に否定的とされています。

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