第460回「ハイレゾ普及が日本人のオーディオ魂に再点火」

 CDでの音楽再生に物足りない愛好家向けのハイレゾ機器・音源の販売普及に火が点いたようです。かつてのオーディオブーム時代、世界の先端でお金を惜しまなかった日本人のマニア魂と共鳴しているように見えます。私も長い間、間に合わせのPCオーディオでそこそこの音質で聴いてきました。昨年秋に数万円でも目覚ましい音質の機器を手に入れ、もう一度、本格的な趣味に出来る感触を得ました。遮音性が低いマンション住まいですからスピーカを諦めて、高級ヘッドフォンに頼る使い方でもいいかと考えています。ちなみにハイレゾ音楽ソフト購入者の半分は40〜50代だそうです。  取り敢えず入手したのが上の写真左側にある、パソコンに接続するパイオニアのヘッドフォンアンプ「U-05」とオーストリアAKGのヘッドフォン「K712Pro」です。パソコンとUSB接続するアンプで良質な製品は従来は20万円とかとんでもない値段がしていたのに、パイオニアやマランツなどから実売数万円で高性能な製品が出てきたのが大きかったと思います。私は2、3万円クラスのアンプでPCオーディオだからこんな程度の音質だろうと我慢していました。ハイレゾソフトを聴く以前に、買い替えたアンプの品位が格段に違い、昔、本格的なスピーカで楽しんでいた時代の音が蘇りました。当時の重量級プリメインアンプの音です。

 最も長く使ったスピーカはテクニクス製の大型3ウエイブックシェルフでした。やや軽い音質の「K712Pro」はケーブルをノイマン社製に付け替えたところ、テクニクススピーカを思わせるどっしりしたモニター調に変わりました。また、自分で設計したバックロードホーンスピーカが今でも印象鮮烈で、20センチコーン型スピーカは見た目はぴくりとも動かないのに顔面をひっぱたく音圧が出ました。新しいアンプで駆動したアメリカGRADOのヘッドフォン「SR60」がバックロードホーンによるバスドラムの音圧を思い出させてくれたのが驚きでした。アンプのドライブ力の違いで以前は全く駄目でした。

 もうひとつ長く使ったスピーカにビクターのソフトドームツイータによる銘器「SX3」があります。これまでメインのヘッドフォン、独ゼンハイザー「HD595」のウェットな音調が似ていました。アンプを替えて音質は向上しましたが、残念ながらハイレゾの超高音域は再生できないように感じます。健康診断聴力検査で少なくとも16KHzまでフラットに聴けると確認しています。「SR60」はドライな音調から想像できたように安い機種ながらハイレゾの音が出ます。

 ハイレゾ音楽ソフトを購入、パソコンに入れて色々と試してみました。LPレコード時代を思い出す瞬間が多々あります。ハイレゾに買い替えるべきソフトはまだ多くないので、「U-05」の192KHzオーバーサンプリングを常時オンにして聴いています。「CDの音楽はオーバーサンプリングしないで聞くのが自然だ」との意見を多数、ネットで見ましたが、長い間、CDに耳を毒された結果でしょう。一聴して私は昔、愛用したMC型カートリッジの高音域を思い出しました。CD音質のままでは鼻詰まりのように聞こえます。

 さてこれからどう進むか、独ゼンハイザー「HD700」の高域は店頭で聞くと素晴らしいものでしたし、長く故障したままになっているSTAXのコンデンサー型イヤスピーカも見直したいと思います。独ベイヤーダイナミック製品なども真剣に試聴したいと考えています。本格的に試したい領域が広がっています。

 なお、これから取り組まれる方、昨年の第417回「PCオーディオのワサピ化とタブレットで良い音」にあるようにウインドウズPCではワサピ化が大前提です。ハイレゾ音楽ソフトでもウインドウズのミキサーを通したら散々な音になってしまいます。ブルーレイ用の再生ソフトなどもワサピ化しておくとテレビ番組や音楽ビデオソフトがぐっと高音質再生になります。