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第461回「IMFは『失われた30年』認定、首相の強気は虚構」 (2015/01/25)

(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

アベノミクスが成長を達成と言えるのか、IMF(国際通貨基金)が昨年10月に公表したGDP推移見込みをグラフにすれば現実は『失われた30年』が認定されたも同然です。首相の強気は国際的評価を知らぬ虚構です。下に掲げる日米中3国の名目GDP推移をご覧ください。バブル崩壊があった1990年代初頭から今回のIMF予測の最終年2019年まで30年間、日本のGDPは5兆ドル前後に張り付いたままです。成長を続ける米中との差は歴然です。


 データはIMFの「World Economic Outlook Database」から採りました。米ドル建ての名目GDPは「実質成長プラス物価上昇プラス対ドルレート上昇」の3要素で出来ています。民主党政権時代は猛烈な円高でGDPが押し上がっていましたが、安倍政権になってからの円安で2012年の59378億ドルが2013年に48985億ドルまで下がりました。2019年には10%伸びて54333億ドルまで戻すと予測されるものの、物価上昇を年に2%見込むなら実質成長分はほとんど無くなります。国際的に第三の矢など信じられていません。

 2010年に中国が日本を抜き去り世界第2位になり、ほんの4年後の2014年には中国は日本の2倍半規模にも達しました。大きな実質成長率に5%前後の物価高と元高が毎年加わって実現したのです。これに対して安倍政権になって成長率がプラスだった時期はわずかしか無い有り様です。「アベノミクスの果実を広く国民に」と喧伝している果実が見当たりません。政府が経済界に要望している賃上げの広がりを期待するほど楽観的になれません。

 為替を円安に振って物価を上げることでデフレ脱出と称しながら、企業輸出や生産は増えません。増税への景気対策として財政支出が膨らむばかりです。JMM(Japan Mail Media)メルマガの特別座談会「アベノミクスと日本の現在」で河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミストがこう厳しい批判をしています。

 《私は2013年の終わり、もしくは2014年の初頭からアベノミクスはもう破綻していると思っています。山崎さんが消費増税はやってはいけなかったとおっしゃって、それは増税のあった4〜6月、7〜9月がマイナス成長になっているからだと思うのですが、実は過去1年で、プラス成長になったのは、消費増税前の駆け込み需要が起こった去年の1〜3月だけなんです。あとは2013年の10〜12月からマイナス成長でした》

 《前政権がビジネスにまったく無関心だったので、今回の政権はプロビジネスでいいと思っている人がいるのですが、私からすると、既存の企業をサポートすることで新規参入のハードルを高めているだけなので、政府がやるべきことは、新規参入のハードルを下げる規制緩和だけだと思っているんです。この文脈で、繰り返しになりますが、財政政策や金融政策で極端なことを続けてしまうと、結局は既存の企業をサポートするだけになる。この20年間の極端な財政政策や金融政策の継続や長期化が、めぐりめぐって新規参入を阻んでいると思います》

 既存の企業や高齢者に顔を向けた実に古めかしい政策が幅を利かせ、真に新しい成長戦略など見当たりません。第435回「2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる」で指摘したように、本質とは乖離した薄ぺらな効率化施策ばかりです。おまけに次世代の若者対策などはほぼ後回しです。

 最初のグラフに見る中国の問題も考えておかねばなりません。この調子なら2024年に名目GDPで中国が米国抜くとの予測が米調査会社から昨年語られました。2008年の北京五輪からの5年間で大気汚染がどれほど進んだことか、第412回「中国重篤スモッグの巨大さが分かる衛星写真」で見ていただく通りです。2008年に比べてGDPは2013年までで2倍になり、2018年には3倍にもなります。現在でも手に負えない汚染物質の増加なのに、過去5年分がこれから汚染物質ひと山も積み上がるなんて信じられません。資源浪費と汚染拡大の経済成長を許してはなりません。

 また中国には社会の急速な老齢化がビルトインされています。第378回「日本に続き中国も超特急で超高齢社会へ突入予定」で示しているように、日本に30年遅れで追随しています。2025年には中国も高齢社会に突入なのですから、調査会社の予測通りになるか疑問を持っています。2025年の段階では生産年齢人口に対して65歳以上人口は2割にもなり、年金資金の蓄積に乏しい中国社会は悲惨な状況に陥るのではないかと思われます。


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