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第508回「甲状腺がん、2巡目で明瞭な放射線影響に気付け」 (2015/12/05)

(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 福島原発事故での甲状腺がん子ども検査で悪性または悪性の疑い人数が増え続けています。福島県関係者は「放射線影響は考えにくい」と言い張るだけで素人目にも明瞭な2巡目の結果を直視するつもりがないようです。1巡目では福島県内全域で甲状腺がん発生が見られたのですが、2巡目で現在までに悪性または悪性の疑いとされた39人を地図にプロットすれば、国指定の避難区域があったり放射能汚染が酷かった市町村に集中しています。事故から時間が経過するほど放射線の影響が強く現れていると解釈すべきです。1巡目の検査では悪性または悪性の疑いとされた人数は112人にのぼりました。


 地図の赤い数字は2巡目で悪性または悪性の疑いとされた人数で、いわき市の1人を除いて白い部分にあります(原資料)。白い部分の25市町村とは国指定の避難区域等があった13市町村に、福島・郡山など放射能の雲が何度も通過して汚染が酷かった中通りの12市町村です。『この放射能の雲の下に膨大な人がいた事実に戦慄』に引用している汚染地図を参照して下さい。

 10人と最多の郡山市、8人の福島市、7人の伊達市、いずれも市街地に汚染が高濃度に広く残ったことが知られています。参照の汚染地図にあるようにグレーの34市町村の中でも、いわき市は放射能の雲が通過して関東に流れた特別な街です。

 一次検査は白の25市町村が26年度実施だったのに、グレーの34市町村は27年度実施であるために要精検者に対する二次検査が少し遅れています。二次検査受診率は白の地域で77%、グレーの地域で33%です。未受診者の中からまだ悪性が出る可能性は高いでしょうが、放射能の雲が通った地域が特異に多い傾向は覆らないでしょう。

 2巡目で甲状腺がん確定数が増えた点について報道で、福島県の有識者検討委、星北斗座長は「チェルノブイリの原発事故に比べ被ばく線量が少なく、事故当時5歳以下の発症がないことなどから、これまでと同じく放射線の影響は考えにくい」と評価したとされました。

 しかし、10月に岡山大・津田敏秀教授の研究グループが国際環境疫学会が発行する医学雑誌「Epidemiology」(インターネット版)で「甲状腺がんの多発は県関係者が言うスクリーニング効果では説明できない」とする研究を発表しています。ただ、上記の公式見解が念頭にあるマスメディアの反応は鈍く、大きくは報じられていません。

 拙稿第472回「甲状腺がんで福島事故否定する見苦しい科学者」で指摘しているように、山下俊一氏らの仮説は現実に破綻をきたしています。2巡目の新傾向についても説明できないでしょう。《「福島の子供の甲状腺がん発症率は20〜50倍」 津田敏秀氏ら論文で指摘》によれば津田教授は現状について「チェルノブイリで4年以内に観察された甲状腺がんの多発と一緒であり、チェルノブイリ同様、5〜6年目以降の大きな多発は避けがたい」と主張しています。

※関係記事の分野別入り口・・・《環境・資源》 《教育・社会》 《医学・医療》




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