第521回「実は24億人が安全な水を飲めず、経済負担も大」

 3月22日の「世界水の日」に関連したリポートで興味深い指摘を幾つか見つけました。汚れた水を飲む人が6億6300万人と伝えられていますが、実は改善水源でも大腸菌汚染があり18億人が安全な水を飲めません。水を得るための費用は途上国では収入の半分にも及ぶともされています。改善水源が得られない人口だけとってもインドが最多で7577万人、次いで中国の6316万人、アジア・アフリカを中心に膨大です。

 ユニセフの《3月22日は『世界水の日』 気候変動が安全な水を脅かす》にこう指摘されています。

 《ミレニアム開発目標(MDGs)が終盤を迎えた2015年には、6億6,300万人を除く世界中のすべての人々が、排泄物との接触がないはずの改善された水源から得られた飲料水を利用することができました。しかし、新たに利用可能となった検査技術のデータによると、推定18億人が、改善された水源を利用していてもなお、大腸菌に汚染された、つまり便の成分を含んだ水を飲んでいる可能性があることが示されました》

 つまり改善水源が無い人と合わせれば未だに24億人以上が「安全な水」を得られていないのです。指摘はこう続きます。

 《便による水の汚染をもたらす主な要因の一つは、衛生環境の不足です。世界中で24億人が適切なトイレを利用できず、そのうち10億人弱が屋外で排泄しています。これは、多くの国やコミュニティで排泄物が広く蔓延している可能性があり、改善された水源すらも汚染されてしまうことを意味しています》

 ウォーターエイドジャパンによる《水の価値とは? 2016年の世界の水》は「家庭で安全な水を手に入れられない開発途上国の貧しい人にとって、わずかな収入の中から、推奨されている量である1日あたり50リットルの水を購入するのは、大きな負担です。多くの人は健康と尊厳を犠牲にしてはるかに少ない量を使用するか、安全ではない水源から水をくんでいます」として、収入の半分にもなるパプアニューギニアやマダガスカルなどを例示しています。

 改善水源が無い人口についても取り上げていて、インドや中国に次ぐのはナイジェリア5775万人、エチオピア4225万人、コンゴ3390万人、インドネシア3228万人などです。

 インドの場合、改善水源が無い人たちは「ほとんどが、1日あたりおよそ3ポンド(495円)で生活しています。給水車から水を買う場合は、1リットルあたり1ルピー(1.7円)」なので経済負担が大変です。汲み上げによる急速な地下水低下がインドでは大問題になっています。一方、富んできた沿岸部では膜技術による海水淡水化や浄化再利用がビジネスになってきました。中国同様に一国内での格差・落差が深刻です。

 中国については第402回「南水北調は中国経済成長持続の難題を解けずか」〜大気汚染と並び未来占う鍵〜で毛沢東が発想した巨大通水事業が出来ても水問題は解けそうにない事情を探っています。