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第522回「セウォル号の乗客待機指示、酷い『藪の中』状態」 (2016/04/02)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

300人超の犠牲者が出た韓国セウォル号沈没、事故から2年になって乗客に退船せず待機と船内放送した事情に新証言が現れました。海運会社が指令を出したと言い、また船長は実は退船指示したと『藪の中』状態です。おまけに船員が乗客を見捨てたのは、不作為というよりも自らの身の安全を守るためだった疑いが浮上しています。最初に船が傾いた現場に駆けつけた海洋警察の救助艇は積極的な救助をしなかったのに、艇長は船が沈没するまでにインターネットに8回も接続していたと伝えられ、関係当事者の不誠実とデタラメぶりが極まります。

 セウォル号事故特別調査委の第2次聴聞会での証言をハンギョレの《セウォル号航海士、会社連絡後に退船措置せず待機命令》が伝えています。

 《操舵手のチョ・ジュンギ氏。チョ氏は特調委の調査過程でカン・ウォンシク1等航海士が会社(清海鎮海運)と通話した直後に「海上警察が来るまで船内で待機しよう」と言ったと証言した後、「船は上意下達が徹底していて、会社の指示を受けたように見えたカン氏が命令調で話したため、他の船員たちも会社の命令として受け止めた」と述べた》

 《チョ氏は「珍島(チンド)海上交通管制センター(VTS)からの『船長の判断で退船させよ』という交信直後に、パク・ハンギョル3等航海士を除いた3人と意見を交換した結果、待機させるという結論を出した」とし「パク・ギョンナム操舵手も賛同するような話をした」と述べた》

 無期懲役刑で服役中のイ・ジュンソク船長は航海士に退船命令をしたと主張とも報じられています。しかし、上の証言では航海士たちの話し合いは、海に飛び込んだら『乗客が水に濡れた場合は、低体温症になるかもしれない。海洋警察が来るまで待とう』だったようです。海運会社指令が退船遅れの原因なら賠償責任が発生するのは必至です。

 一方、市民団体などが参加した「真実の力・セウォル号記録チーム」による解明を伝えたハフィントンポストの《韓国・セウォル号沈没事故、船員はなぜ乗客より先に逃げたのか 交信記録で明らかに》は捜査過程で明かされた船員側の本音を伝えています。

 《乗客に脱出を命じれば、船員の脱出は後にならざるを得ないが、事故現場に到着した100トン級の警備艇では、船員を合わせて「500人程度」を救出するのは不可能に見えた。救命いかだもふくらませておらず、操舵室の船員ら10人のうち、救命胴衣を着ているのは3人だけだった。「当時の状況を考えると、もし乗客と乗組員が一度に海に飛び込んだ場合、救命胴衣を着用していなかった乗組員に死者が出る可能性があった」「非常に危険」だし、「死ぬと思うのが妥当」だった。(2014年5月8日、シン・ジョンフンの第6回被疑者尋問調書)》


 上の写真で一番手前の後ろ姿が救助艇のキム・ギョンイル艇長だといいます。今回、確認された写真3枚は《123艇の船長キム・ギョンイルの携帯電話に保存されていたものだ。傾いたセウォル号の船首を眺めるキム・ギョンイルの後ろ姿、船員が操舵室から抜け出す場面、救命いかだをふくらませる海洋警察の姿などだ。123艇の操舵室から撮った写真で、記念写真のようなものだ。傾いた船に飛び移って乗客を脱出させるべき海洋警察が、なぜ写真を撮っていたのか、その写真を何に使ったのかは確認できなかった。キム・ギョンイルは8時49分にセウォル号が傾いてから、10時30分に沈没するまで計101分間、インターネットに8回接続した》

 昨年の第507回「後始末にも後進性、セウォル号沈没の裁判報道」でこの艇長に懲役3年が確定した経緯を書いています。これほど傾いた船を目の前にして呆然と突っ立っているなんて、日本の海上保安官ならあり得ません。まして救助しないでインターネットに接続していたなんて論外です。救助艇からの写真を海洋警察が公開したのは事故から6日後の4月22日で、それ以前にテレビなどが類似の写真をクレジット無しで使っていた記憶があります。ひょっとするとインターネットに接続は撮った写真をアップするためだったかも知れず、この人は何を考えていたんだと言わざるを得ません。

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