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第507回「後始末にも後進性、セウォル号沈没の裁判報道」 (2015/11/29)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 300人を超す犠牲者の韓国セウォル号沈没事故、今月、韓国最高裁で船長に無期懲役、救助にあたった海洋警察艇長に懲役3年の刑が確定しました。その報道ぶりに司法もメディアも合わせた韓国の後進性が露わです。もし日本国内で起きたとしたら、乗客を見捨てた殺人罪で無期懲役の船長への非難もさることながら、積極的に救助しなかった海上保安官(海洋警察に相当)への批判は大変な厳しさになるでしょう。国家公務員への業務上過失致死罪が確定した重大性に韓国メディアは気付いていません。第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」で描いた構図を自覚できないからです。


 朝鮮日報が報じた事故現場の写真を引用しました。これほど傾いた旅客船に左の救助艇が到着していて、行動すべき艇員は思案投げ首の態です。赤い破線の所で艇員が一人だけ救命ボートの点検をしていますが、定期的に定められたボート展開をせずに塗装だけ塗り重ねた結果、開かなくなっており役に立ちませんでした。懲役3年の艇長が指揮を取っていました。この写真の時点でも乗客に退船を指示していれば全員が助かったとの判断が専門家から出されています。

 懲役3年確定はWoW!Koreaの《セウォル号“いい加減な”救助の海洋警察前艇長に懲役3年》だけが日本語での報道で、朝鮮日報などの日本語版は伝えていません。最高裁までの経過はこうです。

 《キム前艇長はセウォル号事故現場で救助指揮官として船内の乗客状況を確認及び乗客退船誘導措置、セウォル号との交信などの初期救助業務をおろそかにし、多数の乗客を被害に遭わせた容疑で起訴された》

 《1審では「現場指揮官として救助措置を履行していたならば、一部の乗客が船外に出てきて生存していた可能性がある」とし、懲役4年を宣告した。2審では、キム前艇長の責任を認めながらも「大型事故に関する訓練もまともに受けていないキム前艇長に全ての責任を負わせるのは過酷だ」として懲役3年に減刑された》

 検察が起訴を逡巡した状況は第447回「セウォル号沈没での不作為なければ全員助かった」で描きました。第464回「セウォル号救助失敗に国家の罪を認める判決」では、1審の地裁判決が艇長の過失による犠牲者数を56人に限定し、公務員犯罪が国家賠償につながりにくいようにした司法の後進性を伝えました。2審判決はさらに責任を薄めていると読めます。

 第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」で指摘したように、韓国民には法やルールは他人に守らせるもので、自分は自分で判断するとの個人本位の人治意識があるようです。法やルールにがちがちに拘束されているはずの公務員の業務上過失致死もありがちなことと見えているのでしょう。メディアも含めて、これに真剣に怒り、断罪していく姿勢を見せないようでは、今後も韓国社会に法治国家への変化は起きないでしょう。

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