第528回「スマホやタブレットで手軽に科学的測定が可能に」

 グーグルが身近にあるスマホやタブレットで光や音、力を表す加速度の測定ができるアプリを公開しました。概略紹介があるばかりで実践した例が少ないので、手軽にどんなデータが取れるのか、ちょっと試みてみました。アプリはアンドロイドOS用に作られた「サイエンスジャーナル」です。もともとスマホなどがカメラ撮影や通信、姿勢制御のために備えているセンサーを科学的測定に活用しています。その場でグラフが出来るのが面白いですね。子どもの「科学ごころ」を育てる趣旨のように見受けますが、大人が関心を持てるレベルですし、大人から子どもに使わせる提案をしてあげるべきでしょう。まずは自宅周辺の道に80メートルの直線区間を設定、歩いたり走ったり自転車でと……。  加速度(m/s2)は左右、前後、上下の3軸方向で測定できます。今回は80メートルを進む際の力を測るので前後方向(y軸)を見ています。使ったのは8インチのタブレットで、カメラマンベストの胴回りにある大きなポケット入れて測定しました。歩いて42秒、走って26秒、自転車でも最後はブレーキを掛けてゆっくり止めているので26秒でした。ポケットに入れたり出したりする時間が要るので前後にロスタイムが付いています。出し入れと操作ボタンを押す時間です。

 加速度は体重を掛け算すると掛けた力になります。最大値が早足で「26」なのに駆け足で「39」と50%増しでした。自転車ならスタート時に最大「25」と踏み込んで加速してしまうと惰性が働くので後はあまり力が要らない様子が見えます。使ったエネルギーはグラフの山を足した値だと思えばいいでしょうから、自転車に乗ると歩く場合と走る場合に比べて圧倒的にエネルギーを使っていません。走っているとエネルギーの大きな追加はずっと必要です。駆け足の後半は前半に比べてペースを落としているのも見えます。  次に音を測ってみました。身近な騒音といえば電車や地下街です。阪急電車に乗って十三と中津の駅間2分間と、阪神デパートの地下食品売り場の2分間を測定してみました。最大レベルは電車が「80」デシベル、地下が「81」デシベルであまり変わりません。電車の場合、中間の騒音が高くなっており、これは淀川をまたぐ鉄橋の区間です。平均値が「62」でデパ地下の「67」より低く、鉄橋区間を除くと地下街よりもうるさくないと見ていいでしょう。デパ地下でも売り子さんの声が多い場所に近づくと騒音レベルが一段と上がります。

 WIREDの《グーグル「スマホで科学実験を楽しむプロジェクト」を開始》はこんなデータを載せています。《『WIRED』UKはこのアプリケーションを試すため、複数のスタッフに、クローゼットの中で可能な限り大きな声で叫んでもらった。アプリケーションの録音機能を使ったこの「実験」の目的は、叫び声が最も大きい人を知ることだ。結果は80〜83デシベルだった》

 光の測定はもっと手軽にできるでしょう。我が家のリビングはLED照明になっており、フル照明では明るすぎるのでいつもは調光状態です。175センチ下のテーブル上で測ると「456」ルックスでした。フル照明だと「1000」ルックスを超え、保安灯状態なら「1」ルックスでした。仕事場のパソコンのキーボード上では「100」ルックス程度になっていました。

 グーグルが英語版ながら「Making & Science」《Science Journal》で使い方解説をしています。米国では風を測定するキットが買えます。スマホに備わるセンサーとしてもうひとつGPSがあり、今回は使われていないもののユーザーフォーラムを見ると「使えるようにして」と要望があり、検討されるようです。

 これまでも『本格的に空中散歩が味わえるグーグル3Dマップ』『グーグルアースの3Dマップが地方都市にも拡大』で紹介したように実践的に使えるツールを提供してくれるのは素晴らしいと思います。今回の測定アプリで例えば電車やバスの発進・停止の加速度を調べれば乗り心地が分かり、運転者の熟練度が見えるはずです。アイデア次第で生活の中や身近な自然の測定に活かせるでしょう。