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第530回「インドでは首都に住んだら寿命が6.4年縮まる」 (2016/06/12)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 中国を抑えて世界最悪の大気汚染国になったインド、その首都デリーに住んだら寿命が6.4年、国民平均でも3.4年縮むとの研究が公表されました。政府の環境大臣が「為にする不当な結論」と批判する騒ぎになっています。モディ首相が米国を訪問するタイミングに合わせて出たのにカチンと来たようで、「正確に積み上げたデータに依拠していない」と否定する構えです。しかし、あまりにも観測拠点が少なくて実態を把握し切れなかったために沈黙していたインドの科学者がいよいよ動き出したと捉えるべきです。世界最大の英字紙「ザ・タイムズ・オブ・インディア」がこんな刺激的なイラストを載せています。


 7日付の「Delhi’s pollution takes 6 years from your life, says study」から引用しました。北西部にあるデリーで6.4年、以下の4州は東部で西ベンガルが6.1年、ビハールが5.7年など住民が寿命を縮めるとの表現です。息が詰まる真実だと、ガスマスクの絵をあしらっています。

 問題になっている研究はインド熱帯気象研究所の研究チームによる論文です。「Premature mortality in India due to PM2.5 and ozone exposure」です。2011年時点でPM2.5による死者数を57万人、経済損失68兆円と見込んでいます。2月にはカナダの研究で2013年にインドでの死亡者は約140万人で中国は約160万人との報道がありました。

 2月の第517回「重篤大気汚染がインド亜大陸全域で急速に拡大」ではNASA地球観測衛星による浮遊粒子状物質濃度データでの推定で悪化している状況を伝えました。今回の論文が出たのならとインド発の汚染状況データをさらに検索して、「Cause-specific premature death from ambient PM2.5 exposure in India:Estimate adjusted for baseline mortality」に詳細な汚染推定マップを見つけました。


 2000年から2010年の期間でPM2.5の年間平均値をマイクログラム/立方メートルで推定、詳細な地図にしています。日本の環境基準値「1年平均値 15μg/m3以下 かつ 1日平均値 35μg/m3以下」に照らして見て下さい。「4-15」である群青色の地域しか大丈夫なところは無く、ほとんどが東端部や南端部に限られます。ガンジス川沿いは特に酷くて、「76-90」の赤や「90以上」の焦げ茶で埋め尽くされています。これではインド旅行をしたい気持ちが薄れてしまうでしょう。

 しかもこのマップは2011年以前の推定です。第517回「重篤大気汚染がインド亜大陸全域で急速に拡大」の地図で2011年以降にずっと深刻化しているのが見て取れますから、今現在のPM2.5汚染地域はさらに拡大し、各地の汚染度も悪化しているはずです。

 インド環境相は「Pollution Report Malicious and Incorrect: Javadekar」のインタビューで論文の内容を非難する一方、対策としては環境を侵す経済活動の違反行為に新しく罰金を課す法律を作ると言ったに過ぎません。政府の当事者がこの程度の認識で環境が目覚ましく改善に向かうとは思えません。

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