食・健康教育・社会政治・経済人口・歴史 Blog vs. Media 時評
文化スポーツ環境・資源科学・技術医学・医療 ウェブ通

第531回「イチローには一里塚、更に伸びる大記録が異論消そう」 (2016/06/16)

【スマートフォン版はこちら】
(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 イチローがピート・ローズの持つ大リーグ安打記録4256本を上回る4257本の生涯安打数を記録しました。日本プロ野球での安打1278本をどう見るかで異論が出ますが、これからも伸びる記録の輝きが打ち消すでしょう。科学的に見たイチローの特異性はパワー全盛、ムキムキ筋肉だらけの大リーガーを、細身で靭やかな筋肉がもたらすスピードで上回れると証明してみせた点です。時速150キロ前後で投げ込まれる硬式ボールをヘッドスピード150キロ前後で振り出されるバットが弾き返す――地上で最速のスポーツ衝突現象がハイレベル硬式野球の真実です。軽く当てる程度では飛ばないボールを、イチローは自在なバットコントロールを伴う高速振り出しでヒットにするのです。


 イチローが今現在、高度な勝負を続けている現場をローズの記録に王手を掛けた14日パドレス戦8回、この日3本目の安打で見ましょう。「mlb.com」の実況画像から引用しました。ストライクゾーンが描かれているので見やすいです。1死1塁、相手の左腕は内角いっぱい、147キロ前後の速球攻めに徹し、左打者のイチローから見て胸元に真っ直ぐ差し込んでくる感じです。1球目中ほどは見逃しストライク、2球目が高目いっぱいで空振りストライク、3球目に高いボール球を見せておいて4球目は空振りした高さで勝負です。ボール1個真ん中に寄ったのをイチローは鮮やかに左翼線に流すヒットにしてしまいました。左打者は左腕に弱い常識に反して、イチローは左腕の方が高打率です。

 普通のプロ野球選手が苦手にする低目の球にイチローは異常に強く、内外角、高低どのコースもほとんど穴がなくて比較的弱いのは外角高目くらいです。最速衝突現象であるからにはどのコースでもバットが速く振れていなければなりません。筋肉を付けてムキムキマン化した大リーグ強打者はツボにはまれば強いですが、太い筋肉が邪魔してバットが振りにくいコースを持ちます。投手はその苦手コースを突けば凡打に倒せます。

 イチローもピート・ローズも身長は180センチ。現役時代のローズは特にムキムキマンではなかったものの体重90キロあったのに対し、イチローは80キロを切っています。2001年に書いた第102回「大リーグとの『垣根』は消滅した」で紹介した筋肉トレーニング法「初動負荷理論」が走攻守ともに際立つスピード感をもたらしているのです。イチローは大リーグ入りしてからほとんど体重が変わっていないといいます。ちなみにローズは打撃では金字塔を打ち立てましたが、二塁の守備も走塁も目立った選手ではありませんでした。

 さて、ローズらから異論が出ている日本での記録についてです。《ローズ氏 イチローの日米通算安打をチクリ「高校時代のものをカウント」》の言うように高校野球の記録ではなくオリックス・ブルーウェーブ時代の安打です。この記事にある《ダイヤモンドバックスの打撃コーチ補佐を務めるマーク・グレース(51)は肯定派の一人。現役時代に通算2445安打をマークした同コーチは「高いレベルの野球で記録された安打。場所が日本であろうが南極であろうが関係ない」》に賛成です。

 円熟の27歳で渡米して前人未到10年間連続200本安打を続けた時期の平均打率が「3割3分1厘」でした。直前まで日本で残した打率は「3割5分3厘」で、多少はおまけがある程度の差に過ぎません。イチローはまだまだ現役を続けますし、安打記録は4300、4400とさらに偉大になっていきます。王貞治の本塁打記録868本が以前は陰口があっても絶対的な最高峰として尊敬を集めているように、ローズとの比較にならない、誰も超えられない大記録としてそびえ立つでしょう。

※関係記事の分野別入り口・・・《科学・技術》 《文化・スポーツ》







【リンクはご自由ですが、記事内容の無断での転載はご遠慮下さい】
※ご意見、ご感想や要望はメールフォームで。

【INDEXへ】
無料メールマガジン登録受付中