第532回「隠蔽は東電だけか、在京メディアも責任を取れ」 (2016/06/23)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 福島原発事故で炉心溶融が隠蔽された問題の報告を読んで、東電の語るに落ちる無能さが再認識されました。無批判に隠蔽に乗っかった在京メディア各社も他人事のように報道すべきではなく、自らの責任も取るべきです。原発事故に際して公式の発表は福島現地の住民や国民に広く事態の真実を知らせるためにあるのです。その本分を外れて重大事態を軽く見せようとした東電、炉心溶融を口にした原子力安全・保安院の審議官を発表から外した政府も同罪ですし、メディア内部でも疑問の声が握りつぶされていたと聞きます。報道の自由世界ランキングを大幅に下げた国内メディアの覇気の無さはここから始まったのです。

 マニュアルに「炉心損傷割合が5%以上なら炉心溶融」と定められていたのに、5年後の今頃になってその判定基準が「発見」された不思議は、21日に公表された東電の《福島第一原子力発電所事故に係る通報・報告問題に関する当社の対策について》でこう解明されています。

 《福島第一原子力発電所では、防災訓練は、予め日時が決められ、シナリオも用意されていたため、防災訓練に参加する緊急時対策班の要員らは、その都度、原災マニュアルを確認しなくても、対応することが可能であった》《本件事故当時の原災マニュアルに「炉心溶融」の判定基準が記載されていたことを知っていた者もいたが、限られた範囲の社員に止まっており》

 防災訓練で緊急時対策班員は原災マニュアルを読むなど自分で頭を使うことなく、シナリオに書いてある通りのお芝居をしていたと告白しています。だから少数の社員しかマニュアルの規定を知らなかったのです。「やったふり」をするものでしかない緊張感なし訓練が役に立つはずがありません。最初に爆発した1号機で、緊急時の命綱である「非常用復水器」を動かした経験者が皆無だった東電らしい、脱力感いっぱいの新「珍事実」です。

 事故当時の清水社長が「炉心溶融」など記載のメモを渡して「官邸からの指示によりこの言葉は使わないように」指示したとされる問題は、当時の枝野官房長官らが事実無根と猛反発していて尾を引きそうです。当時の菅首相も《東電第三者委員会委員長から「説明する義務はない」との返事》とブログで怒っています。当時の首相や官房長官に事情聴取せず、社長も指示を受けた詳しい経緯を説明できないままで「官邸からの指示」だけが一人歩きするのは異様です。ただし原子力安全・保安院が炉心溶融を知らないはずがなく、保安院内部で自主規制があったのは確かでしょう。


 事故発生から3日目に書いた第245回「福島第一原発3号機も炉心溶融、後手の連続」で掲げたグラフです。原発敷地境界で測定された放射線量(マイクロシーベルト毎時)が2日目「1050」と3日目「882」と大きく制限値500を超え、1号機に続き3号機でも炉心溶融は明確としています。これは当時、誰でも入手出来たデータです。

 朝日新聞の大阪本社で専門家に取材した結果をもとに東京本社に炉心溶融をアピールしたが、握りつぶされたと聞いています。朝日だけでなく在京メディアは政府・東電の発表以外は取材する気がなく、内部からの指摘さえ聞く耳を持たない状態を続けたのでした。いわゆる「大本営発表報道」に堕してしまい、2011年9月の第278回「説明責任を果たさない政府・東電・メディア」で指弾しました。東電を笑えない不始末が在京メディアにはあったのです。政治経済分野を含めて報道の自由は記者の精神的自由を構造的にスポイルしたために大きく損なわれたままです。

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