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第536回「東電資金破綻の現実を認めぬ政府と既成メディア」 (2016/08/06)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 もはや電気料金しか収入が無い東電が廃炉に掛かる何兆円もの追加負担を電気料金に転嫁しないで実現する不思議な記事が日経新聞に出ました。経済産業省の言い分をそのまま書いたとは言え経済紙として杜撰に過ぎます。福島原発事故の後始末は絶望的になっており、炉心溶融した原発の石棺化が言われ始めたり、原発建屋への地下水流入を遮断する周囲1.5キロの凍土壁は完全凍結が困難になったりしています。これには福島の地元から猛反発が出ているものの、収拾費用全体に関わる負担構図が破綻している現実を国民に知らせるべきです。ところが日経に限らず在京の既成メディア各社は見て見ぬふりをするばかりです。

 7月末の記者会見で東電の数土文夫会長が廃炉に関して政府に支援を求める考えを表明しました。これまでに資金の目処を付けている2兆円程度ではとても収まらない状況が見えて来て「経営に与えるインパクトが大」と経営者として放おっておけないと考えたからでしょう。

 これに対する続報として日経新聞が《福島廃炉、公的基金で支援 東電が長期で返済 経産省検討》を掲載しました。

 《経済産業省は東京電力福島第1原子力発電所の廃炉に向けた新たな支援措置の検討に入った。原子力損害賠償・廃炉等支援機構に公的な基金をつくり、廃炉費用を一時的に援助。東京電力ホールディングス(HD)の事業者負担を原則に、長期間かけて国に資金を返す。結果的に電気料金に転嫁されないよう東電HDには徹底した経営改革を求める》

 《福島第1原発は2011年3月の東日本大震災に伴う事故で、1〜3号機の炉心溶融(メルトダウン)が発生した。溶け落ちた核燃料の取り出しなど廃炉の完了には、数十年にわたる時間と数兆円規模に上る資金が必要とされる。ただ、東電HDがこれまで資金手当てのメドをつけたのは約2兆円にとどまり、会計上も約2500億円分しか処理が済んでいない》

 廃炉費用ばかりではありません。立て替えられている巨額な除染費用だって東電に請求されています。賠償も続いています。電気料金には転嫁しない、経営改革で長期的に返済――とキレイ事が言われますが、原発事故後に資産の総整理をして吐き出した東電のどこに何兆円ものお金を生み出す余力があるのでしょうか。

 2012年に作られた東電ひとりが責任を負って費用を負担する建前を見直すべきです。当時書いた第329回「国の巨額支援でなく東電の国有化と電力改革を」でこう指摘しました。

 《もともとの枠組みが間違っています。政府は福島原発事故の収束と廃炉を東電の責任とし、発生した除染費用も立て替えた後で東電に請求するとしています。事業者責任を問う法律の建前と東電前経営陣の企業存続希望によって現在の枠組みが出来ました。しかし、1兆円を投入した「実質国有化」後、百日を経過して第三者が冷静に見れば、全く展望が無いと知ったに過ぎません。東電がこうした費用を負担し続けるならば、原資は東電管内の電気料金です。東電管内だけが止めどなく高い電気料金になっていき、国内経済が歪みます》

 原発事故を起こしたのは東電ですが、原発の安全審査をして運転にゴーサインを出したのは国です。東電だけでなく国にも大きな責任があったのに誰も原発事故の責任を取らないで済ませてしまいました。責任を取らないから費用負担も無くなりました。東電ひとりで巨額負担に耐えるという虚構には最早無理があるので、国民負担せざるを得ない部分を明確にするべきです。既に9兆円の無利子資金枠は使い果たしつつあり、10兆円かそれ以上にもなろうと考えられます。はっきりさせると国の責任を問われ、脱原発への道筋になるから政府は隠しているのです。

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