第578回「人口減無策、本当に社会維持できぬ30年先の秋田」

 人口が4割減、65歳以上が過半になる――国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計人口が示す秋田県の2045年を見て息を呑みました。先進国で稀な人口減無策の日本の中でも極限状態、社会が回りません。第544回「東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる」で各国の老年人口指数推移グラフを掲げました。このグラフより日本は少しは早まって2045年時点で70%に達してしまい、現役1人で高齢者0.7人を支える段階になりますが、秋田に関しては現役1人で高齢者1.2人を支える恐るべき事態です。  年少人口、生産年齢(15〜64歳)人口、高齢人口を並べるグラフでは社会の有り様が実感しにくいので一工夫し、10代前半、30代前半、50代前半、70代前半、90歳以上の5つの年齢別人口をピックアップしてどう推移するか、秋田と東京で見ました。秋田では90歳以上が急激に伸びて人口60万人県になった2045年に5万人に迫ります。70代前半がそれを凌いでいるのに、中核を担う世代は激減します。30代や50代が半分以上も減っていき、この前後の20代、40代も同様ですから社会の機能が現在並に維持できるか、大いに疑問です。

 2015年に「秋田県人口ビジョン」が作られ、「あきた未来総合戦略」も練られているようですが、人口の県外流出はどうにもなりません。15歳時点と30歳時点を比べた「30歳時点での県内定着率」は近年、65%に張り付く傾向です。雪国であっても住みやすい地方として有名な北陸3県が8割前後の人口を維持するのに比べて、秋田は見劣りします。

 東京は都外から流入があって2045年でも人口を維持する稀な存在です。若い世代も維持傾向ながら、70代、90歳以上の急伸ぶりがやはり目立ちます。2040年からは90歳以上が45万人ですし、70代前半だけで100万人とは街の様相は相当な老齢化になるでしょう。都外流入の「化粧」が無ければ様変わりでしょう。それでなくとも50年後には日本人口は7割を切るとされており、日本各地が秋田のような状況に陥ります。

 2015年の第497回「先進国で人口減少は日本だけに、独は難民受容」で指摘したドイツの変容が数字として現れてきました。AFPの《移民流入でドイツの出生率上昇、1973年以来の高水準》が2016年の合計特殊出生率は1.59と欧州平均に上昇とし、こう伝えました。

 《2016年のドイツの出生数は79万2131人で、前年比7.0%の増加となった。このうちドイツ人女性の出生数は60万7500人で同約3.0%増だったのに対し 、非ドイツ人女性の出生数は18万4660人で、同25%も増加した》

 《連邦統計局の人口予測では、ドイツの労働力人口と65歳以上の高齢者人口の比率は2015年時点では3対1だったが、2060年までには2対1になる見通し。ドイツ連邦銀行(Bundesbank、中央銀行)は昨年、戦後のベビーブーマーが相次いで退職する5〜10年後に経済成長が鈍化する可能性を警告した。従って、出生率の上昇はドイツにとって朗報といえる》

 本格的な移民政策の導入を拒み、難民申請にも厳格に対処して認めようとしない政府ですが、第561回「現実に移民流入が日本の人口減少を抑制していた」で描いたように人手不足と相まって、なし崩しの外国人流入が起きています。危機的な将来を見据えて、国家50年、100年の計を今直ぐにも立てるべき時です。